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【和解】「本件に関し」という和解条項

2023/10/16 更新

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「本件に関し」という和解条項

(1)和解文では、以下のような和解をすることがあります。

(2)原告及び被告は、原告と被告との間には、本件に関し、本和解条項に定めるもののほか、何らの債権債務のないこととを相互に確認する

この文言の意味について、ある事案を例に説明します。

事案

AとBは兄弟である。父が亡くなったが、父名義の土地について、AとBは遺産分割の協議をしていない。

AはBに対し500万円を貸しており、AはBに対し500万円を返してほしい、と訴訟をした。

和解案

BはAに対し500万円の返済義務があることを認める。

(省略)

A及びBは、AとBとの間には、本件に関し、本和解条項に定めるもののほか、何らの債権債務のないこととを相互に確認する。

解説

 「A及びBは、AとBとの間には、本件に関し、本和解条項に定めるもののほか、何らの債権債務のないこととを相互に確認する。」という意味は、以下のような意味を持ちます。

「本件に関し」という文言を入れるメリット・デメリット

紛争解決の観点からは、「本件に関し」という文言を入れないのがベストです。「和解条項に定めた権利義務が全て」であり、これを履行すれば、当事者間で債権債務はない。それ以外の紛争はない、ことが確認できます。

しかし、「父名義の土地について、AとBは遺産分割の協議をしていない。」これを別途話し合うべき場合には、本件に関しという文言を入れるか、それとも、「父名義の土地について、AとBは真摯に遺産分割の協議をする。」との条項を入れるのが通常です。

問題なのは、全ての紛争を解決したい当事者と、「別件についても、言いたいことがある(請求権がある)」と考える他方当事者で、「本件について」という文言を入れるかどうかで対立する場合です。

紛争解決の観点からは、「本件に関し」という文言を入れないのがベストです。裁判官は、まずはこちらを勧めます。

しかし、(和解が決裂し)判決を出す場合には、訴訟(審判)の対象となっている権利義務(本件では、500万円の借金問題)についてしか判断されません。したがって、「本件に関し」という文言を入れたくないという理由で和解を拒否しても、判決が出ると、「本件に関し」という文言が入るのと同じことになります。

したがって、「別件についても、言いたいことがある(請求権がある)」と、どちらかの一方当事者が考える場合には、「本件に関し」という文言を入れる形で和解をすることが多いです。

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