【和解】「本件に関し」という和解条項
2025/03/24 更新
このページを印刷「本件に関し」という和解条項

和解文では、以下のような和解をすることがあります。
和解文の例
原告及び被告は、原告と被告との間には、本件に関し、本和解条項に定めるもののほか、何らの債権債務のないこととを相互に確認する

この文言の意味について、ある事案を例に説明しましょう。

和解文に「本件に関し」を入れると、どういうことになるのでしょうか?
事案
AとBは兄弟である。父が亡くなったが、父名義の土地について、AとBは遺産分割の協議をしていない。
AはBに対し500万円を貸しており、AはBに対し500万円を返してほしい、と訴訟をした。
和解案
BはAに対し500万円の返済義務があることを認める。
(省略)
A及びBは、AとBとの間には、本件に関し、本和解条項に定めるもののほか、何らの債権債務のないこととを相互に確認する。
解説
「A及びBは、AとBとの間には、本件に関し、本和解条項に定めるもののほか、何らの債権債務のないこととを相互に確認する。」という意味は、以下のような意味を持ちます。

「本件に関し」という文言を入れるメリット・デメリット
(1)紛争解決の観点からは、「本件に関し」という文言を入れないのがベストです。
「和解条項に定めた権利義務が全てであること」「これを履行すれば当事者間で債権債務はないこと」「それ以外の紛争はないこと」が確認できます。
(2)しかし、「父名義の土地について、AとBは遺産分割の協議をしていない。」これを別途話し合うべき場合には、本件に関しという文言を入れるか、それとも、「父名義の土地について、AとBは真摯に遺産分割の協議をする。」との条項を入れるのが通常です。
(3)「全ての紛争を解決したい」という当事者(つまり、「本件に関し」と入れないでほしいと当事者)と、「別件についても、言いたいことがある(請求権がある)」と考える他方当事者(「本件について」という文言を入れたい、当事者)で、意見が対立することがあります。
(4)紛争解決の観点からは、「本件に関し」という文言を入れないのがベストです。裁判官は、まずはこちらを勧めます。
しかし、(和解が決裂し)判決を出す場合には、訴訟(審判)の対象となっている権利義務(本件では、500万円の借金問題)についてしか判断されません。したがって、「本件に関し」という文言を入れたくないという理由で和解を拒否しても、判決が出ると、「本件に関し」という文言が入るのと同じことになります。
したがって、「別件についても、言いたいことがある(請求権がある)」と、どちらかの一方当事者が考える場合には、「本件に関し」という文言を入れる形で和解をすることが多いです
「本件に関し」という文言を入れるケース
「別件についても、言いたいことがある(請求権がある)」と、どちらかの一方当事者が考える場合には、「本件に関し」という文言を入れる形で和解をすることになります。