特許と職務発明
2023/10/26 更新
このページを印刷職務発明
(1)職務発明とは、従業員が会社の仕事により特許を取得した当該特許をいいます。
(2)職務発明に関しては、会社が販売する商品もしは会社提供するサービスが当該特許に抵触しても無償でそのまま商品を販売し、サービスを提供し続けることができます(通常実施権)(特許法35条1項)。
(3)上記を超えて、会社がその特許を受ける権利を取得する(原始使用者帰属)旨の規定を設けることもできます。
原始使用者帰属
(1)特許を受ける権利は発明者に帰属するのが原則です。しかし、職務発明に関しては、当該発明をした従業員ではなく、会社がその特許を受ける権利を取得する(原始使用者帰属)との定めを設けることもできます(特許法35条3項)。
(2)これに対して、従業員は会社に対し相当の利益を請求できます(特許法35条4項)。
そして、相当の利益が支払われたといえるかは、従業員と会社が公平な手続にて実質的に話し合えたかが重視されます。
企業において、話し合いの方法を含めて職務発明規定を設けてそのルールを定めておくことが重要とされています。
職務発明規定
(1)特許庁がガイドラインを発表しており、職務発明規定を設けてそのルールを定めておくことが望ましい、とされています。
(2)もっとも、職務発明については、その発明が完成した時に、会社が特許を受ける権利を取得する」と定めていれば、会社がその特許を受ける権利を取得することなります(特許法35条3項)。後は、相当の利益が支払われているが問題になります。
https://www.jpo.go.jp/system/patent/shutugan/shokumu/shokumu_guideline.html
職務考案及び職務創作意匠
職務考案(実用新案法11条3項)及び職務創作意匠(意匠法15条3項)については、実用新案法及び意匠法において、それぞれ特許法35条の規定が準用されており、職務発明と同様の制度となっています。
職務著作
著作権法では、職務著作は会社に帰属することとなっています(著作権法15条)。
中小企業の規定例
(1)特許等を多数取得している中小企業では、しっかりとした職務発明規定を設けた方がよいでしょう。
(2)特許を取得することがほとんどない企業では就業規則に以下のような定めがあれば足りるでしょう。
第〇条 知的財産の帰属
1 社員が現在もしくは過去の職務に属する著作・発明・考案・創作をした場合、当該著作権、特許権、実用新案、商標、意匠等その他の知的財産権及びノウハウは、会社に帰属する。
2 職務発明、職務考案、職務創作意匠についてはその発明・考案・創作等した時に、会社が特許、実用新案、意匠を受ける権利を取得する。ただし、会社がその権利を取得しない旨を発明者・考案者、創作者に通知したときはこの限りでない。
3 前項の規定により、会社が特許、実用新案、意匠を取得したときには、会社は発明・考案・創作をした社員に対し、対価として相当な利益を交付する。