Q 伝聞証拠禁止の原則について教えてください。
2025/10/28 更新
伝聞証拠
(1)伝聞証拠とは、刑事裁判において、法廷の外でなされた供述内容を、その供述内容が真実であることを証明するために証拠として用いる証拠です。
(2)文書の作成者が、〇月〇日にAという事実を見て、これを文書で報告する内容の文書と理解してもらってもよいでしょう。
| 犯行現場についての実況見分調書 (1)例えば、万引きされた犯行現場の様子を警察官が報告した報告書だとします。 実務的には、店内の写真や、店の地図、店内の見取り図等が記載されています。 (2)警察官が、店内の様子を見ます。見た内容を立証するために、報告しており、伝聞証拠となります。 (3)客観的な事実を、分かりやすく表現するための証拠であり、弁護人としては証拠として同意してよいでしょう。 犯行再現の実況見分調書 (1)例えば、包丁で脅された様子を「被害者と警察官」が二人で再現し、その様子を別の警察官が写真にとって報告した報告書だとします。 実務的には、加害者役の警察官と、被害者が一緒に写真を写して、これをまとめたものが作られます。 (2)①まず、被害者が、過去に体験した話を思い出して、体で表現しているので、伝聞証拠です。 ②次に、警察官が、被害者が再現した様子そのときの様子を文章にしてまとめているので、再伝聞です。 (3)特に、①の被害者の証言が正しいのかを確かめる必要があり、否認事件では、弁護人は不同意にすべき証拠です。 精神鑑定の鑑定書 (1)被告人との話を聞いて、その結果、医師が判断した診断結果が記載された報告書です。 (2)医師が見た、聞いた内容をまとめた文書であり、伝聞証拠となります。 (3)どこまでが客観的なものなのか確認する必要があります。弁護人として、同意するかは悩ましいところです。 覚醒剤であることの鑑定書 (1)例えば、バックから出てきた粉を解析して、覚醒剤反応が出たという様子をまとめた報告書です。 (2)鑑定人を見た内容をまとめた文書であり、伝聞証拠となります。 (3)客観的な事実を、分かりやすく表現するための証拠であり、弁護人としては証拠として同意してよいでしょう。 被害者の取調べ調書 (1)被害者が、事件当時の話を警察官に説明し、警察官が、そのとき聞いた話をまとめた報告書となります。 (2)①まず、被害者が、過去に体験した話を思い出して話しており、伝聞証拠です。 ②次に、警察官が、被害者から聞いた話をまとめて、文章にしており、再伝聞です。 なお、②については、警察官が被害者に対し、内容に間違いか無いかをチェックするしてらうことで、②の過程の伝聞性は排除できます。したがって、再伝聞ではなく、伝聞証拠として扱ってよいことになります。 (3)特に、①の被害者の証言が正しいのかを確かめる必要があり、否認事件では、弁護人は不同意にすべき証拠です。 |
公判中心主義と、伝聞証拠禁止の原則
1 公判中心主義
(1)公判中心主義は、刑事訴訟において、裁判官は法廷で行われた証拠調べに基づいて判断しなければならないとする考え方です。
(2)刑事事件の場合には、警察が被疑者の取り調べをして、被疑者が罪を認めた自白調書等を証拠収集しています。
仮に、刑事裁判のときに、裁判所が書証(証人が被疑者の犯行を目撃した内容の調書、防犯カメラの映像、被告人が自白した調書)を見てしまうとどうなるでしょうか。
そうなると、裁判官が、裁判をする前に、すべての証拠の取り調べが終わってしまい、実際の裁判が形骸化する、というリスクがあります。
2 伝聞証拠禁止の原則
刑事裁判では、「伝聞証拠については、その作成者が法廷で証言することが原則とすること」「伝聞証拠については相手方の同意のない限り、証拠とできないのが原則とすること」になっています。






