判例(「Xは計画的な犯罪を行った」「Xが1億超のスラップ訴訟をしかけた」「Xはクソ野郎である。」という投稿について、真実性の抗弁が成立し、意見ないし評論であるから、名誉毀損は成立しない、とされた。)
2025/08/10 更新
このページを印刷東京地裁令和6年3月13日
1 事案
(1)女性がXに対し性暴力被害を受けたとして民事訴訟を提起し、令和1年12月18日、東京地裁は「Xは女性に対し同意ない性行為を行った。」認定した。
また、同訴訟では、Xは女性に対し名誉は毀損を理由に1億3000円の反訴を提起したが、同日、東京地裁は、Xのこの反訴を退けた。
(2)この判決を受けて、令和1年12月19日、Yは、以下のツイートをした。
「Xは計画的な犯罪を行った」「Xが1億超のスラップ訴訟をしかけた」「Xはクソ野郎である。」という投稿をした。
2 判決
(1)「Xは計画的な犯罪を行った」「Xが1億超のスラップ訴訟をしかけた」という投稿については、民事訴訟もあり、真実性の抗弁が成立するとした。
(2)「Xは計画的な犯罪を行った」「Xが1億超のスラップ訴訟をしかけた」という事実について、真実性の高原が成立する以上は、「Xはクソ野郎である。」という投稿は、名誉毀損にあたらないとされた。
東京地裁令和6年3月13日
判例タイムズ1533号77以下
解説
(1)ある事実の表現が名誉毀損にあたるかについて、(公共の利害に関する事実について、表現の目的が公益を図るものであり、重要な部分が真実であることの立証がある場合)真実性の抗弁が成立する場合、その事実についての意見ないし評論である場合には、その意見ないし評論については、名誉毀損は成立しない、とされる。
(2)「Xは計画的な犯罪を行った」「Xが1億超のスラップ訴訟をしかけた」という事実について、真実性の高原が成立する以上は、「Xはクソ野郎である。」という投稿は、名誉毀損にあたらないとされた。
(3)「真実性の抗弁が成立する場合、その意見ないし評論にあたる表現ついても名誉毀損は成立しない。」とされるが、その範囲が問題となる。その真実性の抗弁から当然、読み手が印象を受ける表現であれば新たに名誉毀損は生じないであろうし、それを超える場合には、名誉毀損にあたりうると考えればよいだろう。
参考
判例タイムズ1533号77以下
「真実性の抗弁が成立する場合、その意見ないし評論にあたる表現ついても名誉毀損は成立しない。」とされる他の事例も紹介されている。