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労使紛争

判例(定年後の再雇用となった非正規社員と、正社員の給与の格差がパータイム・有期雇用労働法8条に違反しない。不合理だとは判断されない。)(定年後の再雇用)

2025/12/04 更新

福岡地裁令和6年11月8日

1 事案

 会社では、60歳の定年が定められていた。
 定年退職前は無期雇用であったが、定年退職後に1年間の期限付き再雇用された。
 再雇用された社員は、定年退職前より同じ業務をしていた。
 再雇用後の給与等は、定年退職前より下がるものになった。

2 判決

(1)定年退職後に有期雇用で再雇用された社員が、従前とじ業務をしているのに、無期雇用契約と有期雇用労働者の労働条件の差が不合理であるとして、その差額相当額を損害として不法行為に基づく損害賠償請求等を求めました。
(2)本判決は、以下のように判断しています。
(3)定年後の再雇用となった非正規社員と、正社員の給与の格差がパータイム・有期雇用労働法8条に違反しない。不合理だとは判断されない。。

福岡地裁令和6年11月8日
判例タイムズ1537号167頁

解説

1 判断手順

(1)まず、判決は総論として、定年後に再雇用された社員(非正規社員)と正社員の職務や、配置転換の範囲、その他の事情として、考慮される事実について確認した。

(2)その後、各論的に、各手当の格差が不合理であるか、を判断する。

(3)総合的な待遇の格差が不合理であるか、を判断する。

 とい3つのステップで判断をしている。

2 その他の事情

(1)時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律(パータイム・有期雇用労働法)8条は、「定年後に再雇用された社員(非正規社員)と正社員の格差が不合理かを判断するためには、、職務の内容、配置の変更の範囲、その他の事情を考慮するとしている。
(2)判決は、「その他の事情」として以下の事情を考慮するとした。

 ①定年制での正社員の賃金は定年までを補償したものであること

 ②定年後再雇用された社員は、正社員としての待遇を受けて、再雇用され一定の要件を満たせば、老齢厚生年金の支給を受けれること

 ③定年後再雇用された社員は、退職金を受け取っていること

 ④定年後再雇用された社員の待遇について、社内の3つの労働組合のうち2つと一定の合意にたっしていること

 ⑤定年後再雇用された社員は、高年齢雇用継続給付を受けれること

時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律(パータイム・有期雇用労働法)8条 
 事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者の基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、当該待遇に対応する通常の労働者の待遇との間において、当該短時間・有期雇用労働者及び通常の労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはならない。

3 基本給の差異について

 定年後再雇用された社員に支給される期末手当Bは、基本給を補填するために導入されたという経緯を考慮して基本給として合算したうえで、定年前の基本給の70%台が維持されていることが不合理でないとした。

4 定年後再雇用された社員に支給される期末手当と、正社員の期末手当について

(1)定年後再雇用された社員に支給される期末手当は、正社員の期末手当の2分の1程度となることもあった。

(2) 定年後再雇用された社員に支給される期末手当と、正社員の期末手当の目的は同じく、業務への貢献と労働意欲の向上を目的とする功労報償的性質を有する。

(3)再雇用された社員(非正規社員)と正社員の職務の内容には大きな差がないが、再雇用された社員(非正規社員)については高齢であることから職務負担を軽減する配慮がされ、個別同意のない限り転勤を命じない点で配置の変更の範囲に相違が生じており、不合理でないとした。


5 扶養手当、住宅援助金について

(1)正社員には扶養手当、住宅援助金が支給されていたが、定年後再雇用された社員には支給されていなかった。

(2)扶養手当について、定年後再雇用された社員は、正社員の時代には正社員としての待遇を受けていること、退職金を受け取っていること、老齢厚生年金や高年齢雇用継続給付を受けれること、定年後再雇用された社員の待遇について一定の交渉がされていること等を考慮して、不合理でないとした。

6 総合的な待遇の格差について

 定年後再雇用された社員と、正社員との総合的な待遇の格差についても、不合理ではないとした。

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