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労使紛争

大阪医科大学事件(最判令和2年10月15日)

2023/05/05 更新

事案

(1)(無期契約労働者である)正社員の業務は、有期契約労働者と比べると、正社員の業務に難度や責任の程度が高かった。また、(無期契約労働者である)正社員には人事異動があった。
(2)有期契約労働者は、正社員になる登用制度があった。
(3)(無期契約労働者である)正社員には、年2回の賞与が支給され、その額は1年で基本給の4.6か月分に相当するものであったが、有期契約労働者にはなかった。
 基本給と賞与の合計額で比べると、(無期契約労働者である)正社員と有期契約労働者の賃金の差は年55%程度のであった。

判決

(1)個別の手当等についてはその手当等の趣旨から、パート・有期労働者に対し支給しないことが不合理な待遇差にあたるか判断するべきである。
(2)(無期契約労働者である)正社員の業務は、有期契約労働者と比べると、正社員の業務に難度や責任の程度が高かった。また、(無期契約労働者である)正社員には人事異動があった。
賞与は、正社員としての能力を持つ人材の確保し、定着させることを目的としている。
(3)正社員にのみ賞与を支給したとしても、不合理ではない。

最判令和2年10月15日
判例タイムズ1483号70頁

前提知識

パータイム・有期雇用労働法

(1)パータイム・有期雇用労働法では、パート・有期労働者と、無期のフルタイム労働者との間に不合理な待遇差を禁止しています(同法8条、9条)。
(2)同一の業務をしているのであれば、賃金を含めたその他の労働条件が同一である必要があります(パータイム・有期雇用労働法9条)。

本件の問題

(1)かつては労働契約法20条の問題でしたが、現在では、パータイム・有期雇用労働法9条の問題となっています。
(2)有期契約労働者が、(無期契約労働者である)正社員の業務には差がないのに、無期契約労働者である)正社員と比べて、賞与の支給がないのが不合理であるとして、その差額相当額を損害として不法行為に基づく損害賠償請求等を求めました。

解説

(1)本判決は、個別の手当についてはその手当の趣旨から、パート・有期労働者に対し支給しないことが不合理な待遇差にあたるか判断するべきである、としました。
(2)①正社員と有期契約労働者の業務に差があり、かつ、②有期契約労働者は、正社員になる登用制度がある場合には、正社員を確保する目的として、基本給、賞与、退職金に差を設けることが許容されます。
(3)①正社員と有期契約労働者の業務の差とは何でしょうか。
 業務内容の違い、例えば、残業の有無、クレーム対応(対外的に責任を負う)、人事評価(対内的に仕事の責任を負う)があれば、業務の差があるといえるでしょう。
社員教育を充実させておけば、正社員の業務は高度化していきます。
 人事異動があれば、(他の部署での)経験を踏まえて賃金を評価しているとして、その差を肯定しやすくなります。

 https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11601000-Shokugyouanteikyoku-Soumuka/0000146681.pdf

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