ご質問・ご相談などお気軽にお問い合わせください。

TEL 06-6773-9114

FAX 06-6773-9115

受付時間 : 平日10:00 ~18:00 土日祝除く

メールでの
お問い合わせ

労使紛争

判例(「二重偽装請負」と「労働契約の申し込みのみなし」)

2024/03/22 更新

「偽装請負」と労働契約申し込みのみなし

1 偽装請負と労働契約の申し込みのみなし

(1)形式上は請負契約とされているが、実質は労働者派遣となっている場合(偽装請負)、「労働者派遣法等を免れる」目的(「免れる目的」)がある場合には、請負契約上の発注者(派遣先)は、労働者に対し労働契約の申し込みをしたものとみなされます(労働者派遣法第40条の6の第1項5号)。
(2)なお、偽装請負に該当する行為が終わってから1年以内に、労働者が請負契約上の発注者(派遣先)と雇用契約を締結したいと申し出なければ、その効力は失われます(労働者派遣法第40条の6の第3項)。

2 二重偽装請負と労働契約の申し込みのみなし

(1)二重偽装請負(二重派遣)とは、派遣元がその雇用する労働者を派遣先に派遣しながら、派遣先がその雇用する労働者を更に別の第三者に派遣することをいう。

(2)二重偽装請負の場合には、元請人が労働者を注文者に派遣する行為は、自己の雇用する労働者を提供していない(下請人の雇用する労働者を提供している)点で、注文者との関係では、労働者派遣に当たりません。

(3)二重偽装請負の場合には、下請人が労働者を元請人に派遣する行為は、自己の雇用する労働者を提供している。注文者との関係では、労働者派遣にあたります。

判例(大阪高判令和5年4月20日)

1 事案

(1)Y1社が発注者、Y2社が元請会社、Y3が下請会社である。

(2)Xは、Y3の社員であったが、主にY1の指示でCADというソフトを使って図面を作成する作業をしていた。

(3)上記図面作成の業務について、Y1社とY2社、Y2とY3の間で、業務委託契約が締結された。

(4)Xは、この状態が二重偽装請負にあたるとして大阪労働局に申告をした。

(5)大阪労働局の調査後、Y3は、Xに対し、Y3、Y1の労働者派遣契約に切り替えたいと申し入れたがXはこれを拒否した。

(5)Xが退職し、労働局はXの就労が労働者供給事業にあたり違法であるとして是正指導した。

 省略

2 二重偽装請負と注文者に対する労働者派遣法40条の6の第1項5号(偽装請負)

(1)判決は、「二重偽装請負の場合には、注文者との関係で、労働者派遣法40条の6の第1項5号(偽装請負)の適用されない。」としました。

(2)これは、二重偽装請負の場合には、元請人が労働者を注文者に派遣する行為は、自己の雇用する労働者を提供していない(下請人の雇用する労働者を提供している)点で、注文者との関係では、労働者派遣に当たらないからだと思われます。

 労働者派遣法第40条の6の1項は、「労働者派遣の役務の提供を受ける者」は、という文言となっているからです。

労働者派遣法
第40条の6
1項 労働者派遣の役務の提供を受ける者(省略))が次の各号のいずれかに該当する行為を行つた場合には、その時点において、当該労働者派遣の役務の提供を受ける者から当該労働者派遣に係る派遣労働者に対し、その時点における当該派遣労働者に係る労働条件と同一の労働条件を内容とする労働契約の申込みをしたものとみなす。ただし、労働者派遣の役務の提供を受ける者が、その行つた行為が次の各号のいずれかの行為に該当することを知らず、かつ、知らなかつたことにつき過失がなかつたときは、この限りでない。
(省略)
五 この法律又は次節の規定により適用される法律の規定の適用を免れる目的で、請負その他労働者派遣以外の名目で契約を締結し、第26条第1項各号に掲げる事項を定めずに労働者派遣の役務の提供を受けること。

3 元請との指揮命令関係

(1)裁判所は、二重偽装請負の場合には、元請会社との間での指揮命令関係ある限りにおいて、元請人との関係で、労働者派遣法40条の6の第1項5号(偽装請負)の適用があるとした。

(2)裁判所は、以下の事実から、元請との間での指揮命令関係を認めた。

(3)①Xの指示は、主に発注者の社員(Y1)が行っていた。

   ②元請会社の社員も、Xに対しXの業務の打ち合わせに出て、業務報告書を出させる等して、Xに指揮命令を出していた。

(3)以上より裁判所は、元請会社は、Xに対し指揮命令関係を有していた、と認定した。

3 「労働者派遣法等を免れる」目的(「免れる目的」)

(1)裁判所は、以下の事実から、「元請会社には、免れる目的がある、とは認定できない。」としました。

(2)労働契約申し込みのみなしが適用されるには、派遣先が法人である場合には、法人の代表者もしくは法人から契約締結権限を受験されている者の認識として、働者派遣法免れる」目的(「免れる目的」)があることが必要です。
 派遣先においては、派遣と請負の区別が困難なあり、客観的に、偽装請負(実質は労働者派遣)であることだけでは、「労働者派遣法等を免れる」目的(「免れる目的」)があるとは認定されません。

(3)本件では、前述の①②について元請会社が労働者に対し指揮命令関係にあるといえるか一般的に議論されていなかったことや、大阪労働局の調査後には、労働者派遣への切り替えを打診するなど、相応な対応をしていた。

したがって、以上の事実から、「元請会社には「労働者派遣法等を免れる」目的(「免れる目的」がある。」とは認定できないとした。

参考

 判例タイムズ1516号71頁

「労使紛争」トップに戻る

Contact.お問い合わせ

    ※個人情報の取り扱いについては、プライバシーポリシーをご覧ください。