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労使紛争

【労働者性】判例(アイドルに労働者性が認められるとした判例)

2024/01/04 更新

労働者性

(1)外注先が労働者に該当すれば、同人に対する残業代の支払い義務等、労基法の保護が与えられます。

(2)フリーランスに仕事を依頼する場合には、同人に対する扱いが労働者に該当しないかはしっかりとチェックする必要があります。

アイドル等の芸能活動

(1) アイドルと所属事務所との関係について、労働者にあたるのか、それとも、外注先(請負)にあたるのか、問題となります。
(2) アイドル等の芸能活動については、指揮命令になじまない、報酬が本人の才覚に左右されやすい、という側面があり、問題となります。

判例

1 事案
(1)所属事務所Xは、アイドルYと、専属マネージメント契約を締結していた。
(2)専属マネージメント契約では、YはXの指示に従う義務がある。違反した場合には、1回200万円を支払うと規定されていた。以下、本件違約金条項という。
(3)Yがリハーサルやコンサートを無断欠席したとして、XはYに対し違約金1000万円から未払い報酬11万円を控除した989万円を請求した。
(4)Y]は、「Yは労働者であるから労働基準法が適用される。」「労働基準法16条により本件違約金条項は無効である。」と主張した。

2 判決
 以下の事情を認定し、「Yは労働者であるから労働基準法が適用される。」「労働基準法16条により本件違約金条項は無効である。」と判決を下した。


業務遂行上の指揮命令
① 仕事の依頼に対し、拒否する自由があるか。
(1)仕事を受ける受けないを自由に決めることができれば、労働者性は低くなります。
(2)本件では、所属事務所Xがスケジュールアプリでスケジュールを入力されていた。専属マネージメント契約では、所属事務所Xの指示のもとで、芸能活動を誠実に遂行する義務があるとされ、違反した場合には、1回200万円を支払うと規定されていた。アイドルYは、所属事務所Xの指示に従わなければ200万円を支払う義務があるという認識のもとで、スケジュールアプリに入力された仕事を遂行していたのであるから、指揮命令を拒否する自由はなかった。


② 業務遂行上の指揮監督があるか。
(1)業務遂行をする上で、指揮命令や指示を受けずに自由に業務の遂行をしていれば、労働者性は低くなります。
(3) 本件では、所属事務所Xが、スケジュールを決めてある程度時間的にも場所的にも拘束し、その活動内容に具体的な指示をしていた。


③ 勤務場所・勤務時間の拘束があるか。
(1)好きな場所で、好きな時間に、自由に業務の遂行をしていれば、労働者性は低くなります。
(2)本件では、所属事務所Xが、スケジュールを決めてある程度時間的にも場所的にも拘束し、その活動内容に具体的な指示をしていた。

④他人による替えが効くか
(1)本人に代わって他人が業務をしてもよいとなっていますと、労働者性は低くなります。
(2)本件では、アイドルとしての芸能活動であるから、他人に業務をしてもらうことはできなかった。

報酬の労務対償性
① 報酬は労務の対価といえるか。
(1)労務の長さに応じて報酬が決まれば、労働者性は高くなります。個人の才覚において金額が大きく変われば、労働者性は低くなります。
(2)本件では、Yの報酬は最初、月額6万円であったが最終的には月額15万円の報酬が支払われていた。報酬が増えたの、週のスケジュールでの拘束期間が増えてきたからであり、その労務対償性として、月額の固定費が支払われていた。

3 その他

② 事業性の有無
(1)本人が事業用の機械を所有する場合や、報酬が事業者として相場程度に高い場合には、労働者性は低くなります。
(2)本件では、Yには、交通費やレッスン代を負担していない。

③ 専属性の程度
(1) 他社の業務を行うことができれば、労働者性は低くなります。
(2) 本件では、Yは、スケジュール的に他の仕事をすることは不可能であった。

以上よりは判決は、「Yは労働者であるから労働基準法が適用される。」「労働基準法16条により本件違約金条項は無効である。」と判断しました。

大阪地裁令和5年4月21日

判例タイムズ1514号176頁

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