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労使紛争

判例(協調性に欠ける理学療法士について、理学療法士の見地を活かして労災予防の取り組みを企画する事業部を作り、その業務(本部勤務)を命じた転勤について合法だとした。)

2025/12/28 更新

東京高判令和5年8月31年

1 事案の概要

(1)Y会社は、特別養護老人ホームを経営している。

(2)Xは理学療法士の資格を持ち、Y社に入社後は、利用者の自宅を訪問しリハビリテーションの施術を行う業務を行ってきた。

(3)Xは人事評価は最低の1であった。(協調性を欠き、上司に反抗的で、勤務態度も不良であった。)

(4)Y会社は、Xに対し、理学療法士の見地を活かして労災予防の取り組みを企画する事業部を作り、その業務(本部勤務)を命じた。

(5)Xは配転命令が違法であるとして労働審判(その後に訴訟)を申し立てた。

2 判決

(1)Y会社において、理学療法士としての資格を有する社員について、職務限定ないし勤務地限定の特約を締結して雇用する者はおらず、理学療法士としての資格を維持しつつ、訪問看護によるリハビリテーション業務とは異なる業務に配転された職員も存在することから、職務限定合意は成立しない。

 したがって、Xについても職務限定の合意はなく、別の職場への配転命令を命じことができる。

(2)配転命令については、業務上の必要性と、労働者の不利益との比較考量で違法性が判断される。

 人間関係等の問題(従前の業務を行わせることでトラブルになる場合)や、勤務態度の改善を目的に、職場の移動を命じれることも許される。

(3)したがって、現場での施術行為を行っていた(理学療法士)であるXに対し、理学療法士の見地を活かして労災予防の取り組みを企画する事業部を作り、その業務(本部勤務)を命じた転勤について合法だとした。

解説

1 職務限定合意

(1)本判決は、「Y会社において、理学療法士としての資格を有する社員について、職務限定ないし勤務地限定の特約を締結して雇用する者はおらず、理学療法士としての資格を維持しつつ、訪問看護によるリハビリテーション業務とは異なる業務に配転された職員も存在することから、職務限定合意は成立しない。」と判断しました。

(2)仮に、職務限定の合意が成立する場合には、労働者の個別の同意がなければ、同合意に反する異動命令は違法となります(労働契約法8条)。

2 問題社員と本部への移動

(1)Y会社は、Xに対し、理学療法士の見地を活かして労災予防の取り組みを企画する事業部を作り、その業務(本部勤務)を命じた。

(2)小規模の事業所では、手ごわい問題社員に対し指導を行う担当者が存在しないことがあります。

 この場合に、本社勤務を命じて、業務態度の改善を行うのも問題社員対策の一つです。その意味で、一つの解決策を示した判例です。

参考

 ビジネスガイド2026年1月号96頁

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