電子契約
2023/10/16 更新
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(1) メールアドレスを利用して、〇〇@gmail.com(の利用者)と、△△@gmail.com(の利用者)との間で、契約が成立したことを証明するサービスがあります。
(2)仕組みとしては、メールに契約書を添付して送り、相手方に、「添付の契約書で契約を成立させます。」と返事のメールを送ってもらって正式な契約の代わりにするのとほぼ同じです。
電子契約のメリット
(1)紙での契約書を作りませんので、印紙代が要りません。
(2)紙での契約書を作って郵送しないので、これらの手間や費用が不要です。
(3)システムによりますが、契約の更新時期にアラームをつけたり、取引先リストを作って契約の締結状況の一覧を作ったり、複数の取引先に一斉に契約書を送って一括処理することもできます。
電子契約のデメリット
(1)相手が電子契約について不慣れであれば、電子契約に応じてくれるように協力要請をする必要があります。
(2)相手がメールアドレスを持っている必要があります。
導入しようとしてる取引に関し1割の取引先がメールアドレスを持っていないとします。仮に、その方だけ紙での契約とした場合には、紙と電子での二重管理となります。このような場合、電子契約での作業が単に増えることになりかねず、作業量が増える可能性がでてきます。
BtoB取引で、契約書の作成が大量に発生している場合や、契約社員を多数抱えており、その社員との契約の巻き直しに使う場合にのみ、業務簡略化のメリットがでてきます。
(3)契約書の締結をメールに代えてしまうイメージですから、当事者の最終的な意思確認ができません。重要な契約、複雑な内容の契約の締結には向きません。
(4)(自筆で署名されている、もしくは、印鑑が押されている)紙の契約書を見せれば、相手方が納得することはよくあります。これに対して、電子契約の場合には、「システム上、こう表示されています。」と説明しても、相手方の納得を得ることが心理的に難しいところもデメリットです。
電子契約のリスク
(1)電子契約のリスクについては、紙の契約のリスクを参考に考えれば理解できます。
(2)紙の契約において、相手が主張してきそうなリスクは以下のとおりでした。
①「無理やり契約書に署名させられた。」と言われるリスク
電子契約の場合には対面していませんので、リスクは下がるかもしれません。
少なくとも、電子契約したからと言ってリスクが増えるとはいえません。
②「私は契約していない。別の人が私の名前をかたって契約した。」 と言われるリスク。
(1)電子契約の場合には、システムが「メールアドレスを利用して、〇〇@gmail.com(の利用者)と、△△@gmail.com(の利用者)との間で、契約が成立したこと」「正確には、〇〇@gmail.com(の利用者)が、「添付の契約書にて、契約を締結します。」と書かれたボタンを押したこと」を証明してくれます。
(2)紙による契約(署名、押印)の方が、電子契約に比べて本人の同一性について、より優れているとは言えません。
例えば、メールのやりとりがある取引先であれば、「Aさん」と「〇〇@gmail.com(の利用者)」の同一性を容易に立証することができます。 メールのやりとりがある取引先であれば、 リスクが増えるとは考えなくてよいでしょう。
③後日、「事前説明と契約書の内容が異なっていた。契約書を読まずに署名したので無効だ。」 と言われるリスク
(1)契約書の締結をメールに代えてしまうイメージですから、当事者の最終的な意思確認ができません。電子契約でやり取りする場合には、このようなリスクには対応が必要です。
契約書を添付して契約書をやり取りした記録、内容を説明したことをメールを残しておくこと等が大切です。
④「間違って契約書の承認ボタンを押した。したがって、契約の締結としては無効だ。」 と言われるリスク
(1)紙の契約書では考えられなかった言い分として、このような言い分が出てくる可能性があります。
(2)電子契約の承認手続について、「間違って押す」ことがありえるかどうかは、システムの仕様をチェックする必要があります。もしくは、トラブルになった場合に、「間違って契約書の承認ボタンを押すことなどありえないこと」が、容易に説明できる環境があるかは大切です。例えば、youtubeで、契約書の承認プロセスの動画が手に入れば、相手に簡単に説明できます。
(3)また、契約締結時の事前事後のやりとりをメールで残しておき、契約を締結する意思で話が進んでいたことを残していくことも大切です。
電子契約を導入すべき会社
(1)印紙代を節約できます。多少手間が増えても印紙代を節約したい会社には導入メリットがあります。
(2)BtoB取引で、かつ、契約書の作成が大量に発生している場合や、契約社員を多数抱えており、その社員との契約の巻き直しに使う場合には、部分的に導入すれば導入メリットが出てきます。
(3)規模の大きな会社では、(2)の業務が必ずあります。したがって、規模の大きな会社では、(2)の範囲で導入することが考えられます。
電子契約を使ってはいけない場合
(1)電子契約を導入しようとしている業務について、例えば、1割の相手がメールアドレスを持っていない場合に電子契約は不向きです。
(2)重要な契約、複雑な契約の場合には、電子契約は不向きです。
(3)実質的な変更がない場合には別ですが、契約内容が細かく変更される場合には、電子契約は不向きです。
(4)メールでのやり取りをしていない取引先との契約について、電子契約は不向きです。なお、取引金額が小さい場合には、リスクが低いので導入してもよいかもしれません。
取引先にから電子契約にしてほしいと言われたら
(1)電子契約で契約を締結すると、契約書がメールで送られてきます。契約書だけでなく、メール本体もPDFで保存しておきましょう。これらを印刷して、いつもどおり契約書として保管すれば問題はありません。
「もともとの契約書が、いつ、誰のメールアドレスに送られたのか、」検索できるようにしておきましょう。
(2)重大な契約、複雑な契約の場合には、電子契約は断りましょう。
(3)メールのやりとりがない取引先であれば、電子契約は避けるべきです。
例えば、1回目の契約は電子契約を断るが、その後の更新のタイミングで応じる。もしくは、取引金額が小さい場合には応じる。契約内容の確認を別途行ってそれを別途証拠化する。クレジット払いを導入してクレジットカードで本人確認に代える等の対応が必要です。