判例(「エンリケ」という名称についてパプリシティー権利が認められ、ドメインの抹消等が認められた。)
2024/09/07 更新
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(1)Xは、「エンリケ」という芸名のキャバクラ嬢であったものであった。Xは、「エンリケ」という芸名で、多数の本を出したり、テレビにも多数出演していた。
(2)Yは、Xの写真や「エンリケがプロヂュース」等の言葉をHPで使い、Y法人の名称も「株式会社エンリケ空間」等の名前で「エンリケ」の名前が使われていた。
(3)Yは、ホームページのアドレスは、「enrikekukan,com」を利用していた。
判決
(1)Xは、「エンリケ」という芸名で、多数の本を出したり、テレビにも多数出演していた。したがって、Xの「エンリケ」の名称には、顧客吸引力が認められます。
(2)パブリシティー権の侵害は3つの類型が考えられる。Yの行為は、「エンリケ」の名前を使って商品の差別化を図ろうとするもので、第二類型にあたります。
(3)Y法人の名称「株式会社エンリケ空間」である。しかし、「エンリケ」という名称のパブリシティー権に基づいて、Y法人の名称はその名称の抹消をしなければならない。
(4)Yは、ホームページのアドレスは、「enrikekukan,com」を利用していた。「エンリケ」という名称のパブリシティー権に基づいて、Yは、そのURLを利用してはならない。
令和5年11月30日東京地裁
判例タイムズ1522頁
解説
1 パブリシティー権
(1)顧客吸引力のある肖像等を無断で使用し、その使用態様が、①肖像等それ自体を独立して鑑賞の対象となる商品等として使用する行為(第一類型)、②商品等の差別化を図る目的で肖像等を商品等に付す行為(第二類型)、③肖像等を商品等の広告として使用する行為(第3類型)、パブリシティ権を侵害するものとして、不法行為法上違法となる(ビンク・レディー判決)。
(2)芸能プロダクションにとって所属タレントは商品そのものである。芸能プロダクションが、所属タレント(商品)を紹介することは商品の差別化を図ったり、商品を広告したりすることはいえない。パブリシティ権を侵害しない。
(2)パブリシティー権の侵害については以下のように検討することになります。
2 顧客吸引力
(1)その肖像権等について、顧客吸引力が必要です。
(2)本件では、Xは、「エンリケ」という芸名で、多数の本を出したり、テレビにも多数出演していた。したがって、Xの「エンリケ」の名称には、顧客吸引力が認められます。
(3)また、Yは、Xの写真や「エンリケがプロヂュース」等の言葉をHPで使い、Y法人の名称も「株式会社エンリケ空間」等の名前で「エンリケ」の名前が使っていた事実も、顧客吸引力を肯定する事情です。
3 3類型該当性
(1)パブリシティー権の侵害になるのは、以下の3つの場合に限定されます。
①肖像等それ自体を独立して鑑賞の対象となる商品等として使用する行為(第一類型)
②商品等の差別化を図る目的で肖像等を商品等に付す行為(第二類型)
③肖像等を商品等の広告として使用する行為(第3類型)、パ
(3)ピンク・レディー事件(最判平成24年2月2日民集66巻2号89頁)は、上記の三類型に加えて「など」と記載しており、上記の三類型以外のパブリシティー権利侵害を一切認めないものではない。
しかし、パブリシティー権利侵害が認められる事案を三類型を示した趣旨を考えれば、その三類型以外の事情が認められるのは例外的な場合に限られます。
参考
清水節他「Q&A 著作権の知識100問」448頁
4 本件の事案
(1)Yは、Xの写真や「エンリケがプロヂュース」等の言葉をHPで使い、Y法人の名称も「株式会社エンリケ空間」等の名前で「エンリケ」の名前を使っていました。
(2)Yの行為は、「エンリケ」ブランドを全面的に利用するもので、②商品等の差別化を図る目的で肖像等を商品等に付す行為(第二類型)にあたります。
(3)したがって、Y法人の名称も「株式会社エンリケ空間」であるところ、パブリシティー権に基づいて、Y法人の名称の抹消が認められました。
(4)Yは、ホームページのアドレスは、「enrikekukan,com」を利用していたところ、パブリシティー権に基づいて、Yは、そのURLを利用禁止が認められました。