判例(クラブのママや、ホステスが枕営業の目的で、顧客と性交渉をしても、顧客の妻との関係で不法行為責任は負わない、とした事案)
2024/12/11 更新
このページを印刷判例の内容
女性が結婚している男性と性交渉を持てば、その男性と妻との間の婚姻生活を脅かすものとなります。
原則としては、その女性は男性の妻に対し損害賠償義務を負うのが原則です。
しかし、クラブのママや、ホステスが枕営業の目的で、顧客と性交渉をしても、顧客の妻との関係で不法行為責任は負わない、とされました。
(平成26年4月14日東京地裁判例)
参考
判例タイムズ1411号313頁
解説
ソープランドに勤務する女性が対価を得て性交渉をする場合、女性には選択肢がなく、商売として顧客の要求を満たしただけであり、その男性と妻との間の婚姻生活を脅かすものではない、とされています。
これに対して、クラブのママ等の枕営業では、「対価が直接的でない。」「枕営業をする顧客を自分の意思で選ぶ。」という点で異なります。
性交渉のきっかけが「恋愛」であったか、「遊び」であったかに関わらず、性交渉の時点で夫婦関係が破綻状態にないかぎり、不倫関係にある女性は、男性の妻に対し損害賠償義務を負うことを原則として、「遊び」であったことは、慰謝料額を減額するというのが裁判実務でした。
判例タイムズ1411号313頁では、「慰謝料金額を減額することまでは異論がないが、賠償義務はない、と言い切れるかは、今後の判決の積み重ねで決まる問題である。」との解説がされています。
最判昭和54年3月30日との整合性
最判昭和54年3月30日(民集33巻2号303頁、判タ383号46頁)は、ホステスが顧客と性交渉をしたとして、顧客の妻がホステスに対し慰謝料請求をした事案です。この時間では、ホステスに対し損害賠償義務を認めました。
同時間は、知り合ったきっかけがホステスと顧客というだけであって、二人の間に子供が生まれており、性交渉は「恋愛」に変わっている事案であり、事案が違う、という解釈になると思われます。
参考
判例タイムズ1411号313頁