判例(一話完結形式の小説のキャラクターは、著作権法の著作物にあたらない。また、不正競争防止法の「商品等表示」にも該当しない。
2025/08/09 更新
このページを印刷一話完結形式の漫画のキャラクターと著作権
一話完結形式の漫画のキャラクターそのものは、具体的な表現から昇華した抽象的概念です。
このようなキャラクターは、具体的な表現ではないから著作権法の保護を受けません。
著作権は、そのキャラクターを記載された絵そのものに成立します。
著作権を侵害する場合には、そのキャラクターを記載した絵そのものを基準に、その特徴の類似性等を主張していくことになります。
なお、著作権を侵害するときに、侵害者が参考にしたであろう絵まで特定する必要はありません。
参考
清水節ら「Q&A 著作権の知識100問」90頁
判例(令和5年12月7日東京地判)の判断
本件事例は、一話完結形式の小説のキャラクターの著作権を主張するものであった。

一話完結形式の漫画のキャラクターも同じく考えれば、そのキャラクターを記載した文書そのものを基準に、その特徴の類似性等を主張していくことになります。
原告らは、著作物 につき、①通常より大きい三度笠を目深にかぶり、②通常よりも長い引き回しの道中合羽で身を包み、③口に長い竹の楊枝をくわえ、④長脇差を携えた渡世人(以下、「本件渡世人」という。)であると特定するにとどまり、本件渡世人を個別の図柄等として特定するものではなかった。
原告は、具体的に侵害されたという、著作物を具体的に特定できておらず、著作権侵害は成立しない。
不正競争防止法の2条1項1号、2号と、商品の形状
原告の主張
不正競争防止法の2条1項1号、2号は、周知もしくは著名な「商品等表示」を第三者が使うことを禁止しています。
原告は、上記のキャラクターの使用は、不正競争防止法の2条1項1号、2号の「商品等表示」に該当し、被告の商品は不競争防止法違反にあたると主張しました。
判例(令和5年12月7日東京地判)の判断
商品等表示は、氏名、商号、商品の容器、包装のことをいいます。これらには、その商品の販売する者が誰であるかを表示する機能(出所表示機能)があります。
原告は、キャラクターが商品等表示を示すと主張しました。しかし、キャラクターは、本来的には出所表示機能がありません。
したがって、上記のキャラクターの使用は、不正競争防止法の2条1項1号、2号の「商品等表示」に該当しません。
(令和5年12月7日東京地判)
参考
判例タイムズ1527号247頁以下