判例(先天性の聴覚障害を有する11歳の児童が交通事で死亡した事案で、障害があることを理由に減額せずに、全労働者の平均賃金にて逸失利益を計算した)
2025/10/29 更新
このページを印刷未就労の若年者の逸失利益の考え方
(1)事故等により、被害者が死亡した場合の逸失利益について、被害者が未就労の若年者であれば、実際の収入を推察することは困難であるから、全労働者の平均賃金を基礎収入として計算するしかありません。
(2)被害者が障害を有する若年者である場合にはどうするべきか。
障害を有することで労働力を一定程度制限されるとして、全労働者の平均賃金を1割、2割減額するという判例もあります。
広島高判令3.9.10判時2516号 58頁
17歳の全盲の視覚障害者が 交通事故により労働能力を失った場合に, 全労働 者の平均賃金の8割を基礎収入として逸失利益を算定しました。
名古屋地判令3.1.13交民 54巻1号51頁
18歳の聴覚障害のある男子大学生が 死亡した場合に, 男子大卒労働者の平均賃金の 90%を基礎収入として逸失利益を算定しました。
大阪高裁令和7年1月20日 判例タイムズ1536号121頁
(1)先天性の聴覚障害を有する11歳の児童が交通事で死亡した事案について、以下の事情があることから、障害があることを理由に減額せずに、全労働者の平均賃金にて逸失利益を計算しました。
(2)まず、児童は、補聴器を付ければ音を聞くことができ、かつ、手話や文字その他で、意思を伝えることができること、今後のIT技術の発展で、さらに、聴覚障害を理由とするコミケーションの問題が解決されることが予想されること等考慮して、障害があることを理由に減額すべきでないとされました。
参考
判例タイムズ1536号121頁
障害を有する未就労の若年者についての逸失利益の考え方が簡潔に説明されています。






