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音楽著作物の利用主体

2023/10/27 更新

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音楽著作物の無断使用

(1)著作権者の承諾を得ずに、音楽著作物を営業目的で利用すると、著作権を侵害したことになります。その場合、著作物を無断で利用した者は、著作権者に対し損害賠償義務を負うのが原則です(民法709条)。
(2)例えば、ラジオ放送をそのままBGMとしてお店で流すのは著作権違反ではありません。しかし、録音したCDをお店で流す等の行為は、著作権管理団体(JASRAC)との使用契約を締結しなければ、損害賠償義務を負います。
(3)損害賠償義務を負うのは誰なのか。これが、音楽著作物の利用主体の問題です。

飲食店のカラオケ

 飲食店でカラオケ装置を提供し、お客さんにカラオケ装置を利用させる行為については、店の管理でお客に歌わせていること、お店がこれによって利益を得ていることを理由に、飲食店が音楽著作物の利用主体であり、同人が著作権法違反に基づく損害賠償義務を負います。
(最判昭和63年3月15日民集42巻3号199頁 判タ663号95頁)

リース業者

(1)カラオケ業者は、飲食店にカラオケ装置を販売する際には「飲食店がお客さんにカラオケ装置を利用させる行為をすること」や、「飲食店の多くは、著作権管理団体(JASRAC)との使用契約を締結していない。」ことを知っています。
(2)リース業者が、飲食店が著作権許諾契約を締結せずに、違法行為をすることを知ってリースをした場合には、飲食店の違法行為を助長したことになります(清水節ら編集「Q&A 著作権の知識100問」355頁)。
(3)飲食店の多くは、著作権管理団体(JASRAC)との使用契約を締結していないという前提事実があることを前提にして、カラオケ装置のリース業者は、飲食店にカラオケ装置をリースするさいには、カラオケ店に対し、著作物使用許諾契約を締結するだけでなく、著作物使用許諾契約を締結し又は申込みをしたことを確認した上でカラオケ装置を引き渡すべき義務があります。これを怠って、カラオケ装置のリースをすれば、リース会社も同人が著作権法違反に基づく損害賠償義務を負います。
(最判平成13年3月2日民集55巻2号185頁)

音楽教室でのレッスン

(1)音楽教室では、授業料をもらって生徒にレッスンをし、生徒は演奏を行っています。
(2)しかし、音楽教室の場合、生徒は演奏技術の向上を目的に、自らの意思で演奏を行っています。音楽教室(先生)が伴奏したり、録音物を再生したりすることもありますが、これは生徒の演奏の補助を行っているにすぎません。したがって、音楽教室は、音楽著作物の利用主体ではないとされています。
(3)音楽教室の事案では、生徒が自らの意思で演奏をする主体(音楽著作物の利用主体)であることから、逆に、音楽教室は音楽著作物の利用主体として認められなかったと理解するのが妥当だと思われます。

(最判令和4年10月24日 判タ1505号37頁)

参考

 判例タイムズ1505号37頁
 清水節ら編集「Q&A 著作権の知識100問」354頁

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