Q 著作権法6条の「著作物」に該当しない情報について、他人が無断で使用した場合に、損害賠償義務を負うことがありますか。
2025/10/12 更新
このページを印刷著作権法6条の「著作物」に該当しない場合

「著作物」に該当しない情報を無断で使用された場合は損害賠償を請求できないのでしょうか?

著作権法6条の「著作物」に該当しない情報についても、法律に保護に値する権利を侵害した場合には損害賠償義務を負う場合もあります。
いくつか判例をご紹介しましょう。
著作権法6条の「著作物」に該当しない情報は、知的財産法で保護されていない情報です。
しかし、他人が労力をかけて作成したものを他人が無断で使用することを認めれば、これを努力しようとするインセンティブを失うことになります。
したがって、著作権法6条の「著作物」に該当しない情報について、他人が無断で使用した場合であっても、法律に保護に値する権利を侵害した場合には損害賠償義務を負うとされています。(最判平成23年12月8日民集65巻9号3275頁)
したがって、どのような場合に、損害賠償を負うのか問題となります。
平成23年12月8日民集65巻9号3275頁
我が国(日本)が、北朝鮮の著作物について、文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約に基づく権利義務は発生しないという立場を採っているときは、北朝鮮の国民の著作物である映画は、(日本の)著作権法6条3号所定の著作物に当たるとされることはない。
著作権法6条の「著作物」に該当しない情報について、他人が無断で使用した場合であっても、法律に保護に値する権利を侵害した場合には損害賠償義務を負うことがあります。
テレビニュース番組において、北朝鮮の国家の現状等を紹介することを目的とする約6分間の企画の中で、同目的上正当な範囲内で、2時間を超える長さの本件映画のうちの合計2分8秒間分を放送した場合には、原告の営業を妨害するものではなく、損害賠償を負わない。
東京高裁令和6年6月19日判決
バンドスコアは、バンドの全パートの譜面が一冊にまとめられたものです。通常、ギター、ベース、ドラム、キーボード、ボーカルの譜面が含まれています。
補足
バンドスコアは、市販のCDなどから音を聴き取り(耳コピ)、採譜されることが一般的です
原曲を再現すること前提に、アレンジされていないバンドスコアは、作成者の個性を創作的に表現したものではなく、作成者の「音楽の著作物」に該当しません。
原告がハンドスコアを販売していたところ、被告がこれをコピーしてウェブサイトで無料で掲載し広告収入を得ていた。
原告は、ハンドスコアの代金を前提に賠償額を主張したが、裁判所は、民事訴訟法248条をの趣旨を援用して、その1割の金額を損害として認めました。
この判例は、原告が労力をかけて成果物を作成し、被告がこれを無断で活用して利益を得て、かつ、これによって、原告にも経済的損失があることを重視したものと考えられます。
参考
判例タイムズ1534号105頁






