判例(休職期間満了による退職が違法とされた事案)
2023/05/02 更新
事案の概要
平成26年4月 入社
平成27年12月 従業員は適応障害と診断された。
平成28年3月 会社は従業員に対し休職を明示じた。
平成29年7月 産業医等が適応障害の症状が解消したと診断した。
平成30年12月 会社は「就労不能である」として休職期間満了により自然退職とした。
裁判所の判断
(1)平成29年7月に産業医等が適応障害の症状が解消したと診断していること等を考慮して、平成29年7月末には、従前の職務を通常程度に行うことができないような適応障害の症状は解消した、と認定しました。
(2)一定の配慮が必要であるから、同年8月1日以降は段階的に、従業員を復職させるべきであった、と判断した。
(3)それにも関わらず、会社が休職期間満了により自然退職とした、ことは無効であると判断した。
(4)裁判所は、従業員の地位を有することと、平成29年8月から判決確定日までの賃金請求を認めた。
令和3年12月23日名古屋地裁
解説
(1)裁判所は従業員の性格的特性が影響して適応障害を発症したと認定されています。
(2)平成29年7月に、産業医等が適応障害の症状が解消したと診断しました。会社がこれにも関わらず就労労不能と判断したのは、従業員の性格からして業務に必要なコミュニケーション能力が不足している(能力不足)として判断したからだと認定されています。
(3)裁判所は、能力不足を理由に解雇するのであれば、その手続きを経るべきであり、その手続を減らずに休職期間満了を理由とする退職(実質的な解雇)をしたことを問題にしたようです。
休職理由に含まれない事情を根拠に就労不能と判断して、休職期間満了による自然退職をすることは認められないことを示した判例です。
参考
ビジネスガイド2023年2月号94頁