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労使紛争

判例(信用金庫の社員が、過大なノルマや、上司からの不当な叱責を受けて、自殺したところ、精神障害の発症とこれによる自殺について、業務起因性が認められた。)

2025/12/03 更新

名古屋高裁令和6年9月12日

1 概要

(1)信用金庫の社員が、過大なノルマや、上司からの不当な叱責を受けて、自殺したところ、精神障害の発症とこれによる自殺について、業務起因性が認められた。

(2)信用金庫の社員(本件労働者)の父親が、本件労働者が精神障害を発症したことと、これによる自殺について、業務起因性が認められるとして、埋葬費を請求した。

(3)労働基準監督署は、不支給の決定をした。本件労働者の父親が不支給の決定の取消訴訟を提起した。

2 精神障害の労災認定について

(1)本件労働者は、自殺に至る前に精神科でうつ病だとの診断を受けていなかった。

(2)本件労働者の自殺に至る経緯を分析し、うつ病を発症していたと認定しました。

3 精神的負荷

(1)本来は必要性のないクレジットカードを親族に頼んで作ってもらうように、指導するなど、過大なノルマが課せられていると認定され、かつ、以下のように、上司からノルマの不達成について、「案件取らぬ者は給与泥棒」との発言し厳しく責められていたこともあって、少なくとも「中」に該当し、「強」に近いと判断されました。

(2)時間外労働については、土日にの上司からゴルフの送迎を頼まれることや、ノルマを達成することも求められており、休日はほとんど休めなかったとされ、具体的な労働時間は把握できないが、「中」に該当すると認定されました。

(3)上司は営業目標の達成を強く要求する一方、ミスのない仕事を要求し、さらに、残業を禁止して、本件労働者がやむをえず昼食時間に事務処理をしていたのを見つけると「人事考課を下げるぞ」と本件労働者がどのようにも対応できない状況に追い込み、かつ、「バカ野郎」「横領してるからそうなるんじゃないか」「無駄に仕事してるふりしてるなら客をとってこい。」との罵倒を浴びせており、必要かつ相当な範囲を逸脱する指導叱責があり、「強」にあたると認定された。

(4)これらを総合的に考えると、全体的評価としても業務の心理的負荷は「強」に該当する。

(5)したがって、信用金庫の社員が、過大なノルマや、上司からの不当な叱責を受けて、自殺したところ、精神障害の発症とこれによる自殺について、業務起因性が認められる。

(6)よって、労働基準監督署の不支給の決定を取り消す、と判決した。

名古屋高裁令和6年9月12日

判例タイムズ1537号48頁

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