判例(履歴書の職務経歴について半分近くが虚偽であったことが、内定後のバックグラウンドチェックで判明し、内定取り消しが有効とされた。)
2026/01/22 更新
1 事実関係
令和4年4月、Xは履歴書を提出した。
令和4年5月末日、会社Yは、採用の内定を出した
契約期間 令和4年9月1日より期限の定めなし
給与額 年棒550年
内定通知には、経歴調査の結果によっては内定を取り消す可能性があると記載がされていた。
採用内定後に、調査会社がバックグラウンドチェックを実施した。
バックグラウンドチェックによって、令和4年7月末には、「2020年6月から現在に至るまでB社契約(個人事業主)と申告していたものの、経歴調査を進める過程において、実際には、(1)2021年6月から2021年11月までは株式会社Fにて有期雇用として勤務、(2)2021年12月から2022年2月まではブランク、(3)2022年3月は株式会社Gにて有期雇用として勤務していた。」ことが確認されました。
令和4年8月末日、Y社は内定を取り消した。
2 裁判所の判断
(1)内定取消が認められるには、①内定当時、知らず、かつ、知ることができない事情であることと、②その事実が、会社が期待していた労働者の資質、能力を欠くか、相互の信頼を大きく損なうものであることが必要です。
(2)職歴は、労働者の職務能力や適性を判断するのに重要な事項です。
(3)Xは、株式会社Fとの紛争を隠すために、株式会社Fとの経歴を意図的に申告しなかった。
(4)Xによる経歴詐称は、履歴書に記載された期間の半分に及ぶものであった。
(5)Xによる経歴詐称は、会社Yは内定時に容易に知りえるものではなかった。
(6)会社Yは、適切なコミュニケーンで仕事をこなせることを募集要項に入れ、部下に指示を出す立場としてXを採用する予定であった。
したがって、会社Yの職歴調査(バックグラウンドチェック)は、労働者の技能だけでなく、職場の定着性、協調性を調査するものであった。
(7)したがって、会社Yの内定取消しは有効です。
東京地判令和6年7月18日 労判1333号63頁
東京高判令和6年12月17日 労判1333号58頁
解説
1 内定取消しの要件
判例は、「上記解約権の行使は、採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実であって、 これを理由として採用内定を取り消すことが解約権留保の趣旨,目的に照らして 客観的に合理的と認められ社会通念上相当として是認することができるものに限られるものと解することが相当である。 そうすると、本件では、バックグラウ ンドチェックを含む経歴調査により、単に、履歴書等の書類に虚偽の事実を記載 しあるいは真実を秘匿した事実が判明したのみならず、その結果、労働力の資質 能力を客観的合理的に見て誤認し、企業の秩序維持に支障をきたすおそれがある ものとされたとき、または、企業の運営にあたり円滑な人間関係,相互信頼関係を 維持できる性格を欠いていて企業内にとどめおくことができないほどの不正義性 が認められる場合に限り、上記解約権の 行使として有効なものと解すべきである。」と述べている。
(2)つまり、内定取消が認められるには、①内定当時、知らず、かつ、知ることができない事情であることと、②その事実が、会社が期待していた労働者の資質、能力を欠くか、相互の信頼を大きく損なうものであることが必要としています。
2 内定取消の検討
(1)まずは、本件の経歴詐称が、内定当時、知らず、かつ、知ることができない事情であるか、問題となります。
(2)次に、①詐称した経歴の内容、詐称の程度、②詐称の動機、③企業が期待していた労働者の能力と、④詐称による影響の大きさを考慮して、内定取り消しの有効無効を判断しています。
参考
ビジネスガイド2026年2月号6頁






