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労使紛争

判例(運賃の着服等を理由とする懲戒解雇を理由に退職したバスの運転手(公務員)について退職金の不支給としたことに違法がない。)

2026/01/02 更新

最判令和7年4月17日

概要

(1)地方公共団体が経営するバス会社の社員が、乗客からの5人分の運賃(合計1150円)を横領した。

(2)地方自治体は、同職員に対し懲戒免職処分とし、退職手当の全部を支給しないとする処分した。

(3)同職員は、上記の処分の取消訴訟を提起した。

判決

(1)判決は、以下の事情を考慮すれば、退職金の全部を支給しないとした処分は、適法であ。退職金の全部を支給しないとした処分は、社会観念上著しく妥当を欠くものではない、と判断しました。

(2)判決は、以下の事実を考慮しても、「退職金の全部を支給しないとした処分は、社会観念上著しく妥当を欠くものではない。」と判断しました。

 職員は乗客からの5人分の運賃(合計1150円)を横領した。

 職員は29年在職し、退職手当等の金額は1211万円余りであった。

 職員は、本件行為以外に、一般服務や公金の取り扱いに関し、懲戒処分を受けたことがない。

最判令和7年4月17日判決

判例タイムズ1538号23頁

解説

1 社会通念審査

(1)公務員の退職手当支給制限処分の適否につい ては、最三小判令 5.6.27 民集77巻5号1049頁、判夕1513号65頁 (以下 「令和5年最判」 とい う。)は、退職手当の全部又は一部の不支給についての行政庁の判断を尊重すべきである。退職手当の全部を支給しないとした処分の判断が、社会観念上著しく妥当を欠いて裁量権の範囲を逸脱し、または濫用したものと言える場合に違法となる、という基準で判断すべきであるとしました。

(2)社会観念上著しく妥当性を欠く場合に違法となる基準は、社会観念審査とも呼ばれます。

(3)公務員の懲戒処分等については、同社会観念審査にて審査するのが判例の基本的な考え方になっています(神戸関税事件判決、最判昭和52・12・20民集31巻7号1101頁)。

 したがって、公務員の退職手当支給制限処分につい ても、特別に基準で判断するという理由がなければ、社会観念審査(社会観念上著しく妥当性を欠く場合に違法となる)という基準で判断することになります。

(4)社会観念審査で審査するということは、裁判所がその判断の当否を判断するのではなく、行政庁の判断過程を認定し、特に問題があるかないかを判断することになります。

 そのうえで、職員の、飲酒運転処分等が重大な違反であるとして、「退職金の全部を支給しないとした処分は、社会観念上著しく妥当を欠くものではない。」と判断したものです。

2 一般企業の退職金の全部又は一部不支給

 本件の判断は、一般企業の退職金の全部又は一部不支給の判断について、直接参考になるものではない、と言われています。


3 公務の遂行中に職務上取り扱う公金を横領したこと

(1)近年、懲戒免職処分を受けた地方公務員に対してならされた退職手当支給制限処分について、令和5年最判)と令和6年最判(最三小判令 6.6.27 裁判集271号129頁、判夕1529号52頁 )があります。

 これらは直接職務とは関係ない、飲酒運転事案に関するものでした。

(2)本件は、バス運転手であった職員が乗客からの5人分の運賃(合計1150円)を横領した、というものでした。

 これは、公務の遂行中に職務上取り扱う公金を横領したものであり、金額は大きくありませんが、事業に関する信頼を大きく失うものであります。このために、退職金の全部支払わないという判断も正当だと判断されました。

 

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