年次有給休暇の基本
2025/03/03 更新
年次有給休暇
(1)年次有給休暇は、一定期間勤続した労働者が取得する休暇です。「有給」で休むことができるます。つまり、取得しても賃金が減額されない休暇です(労働基準法39条)。
(2)年次有給休暇の取得の要件は、①入社日から6か月経過していること、②その期間の全労働日の8割以上出勤したこと、の2つです。
この要件を満たした労働者は、10日の年次有給休暇が付与されます。
(1年後の)1年6ヶ月後では、1日追加された11日の年次有給休暇が付与されます。
(3)パートタイマーの場合には、(週5の勤務の労働者に付与される年次有給休暇の日数)×(当該労働者の所定労働日数)÷5.2日で計算された数字の1日未満を切り捨てた日数となります。

参考
安西愈「新しい労使関係のための労働時間・休日・休暇の法律実務 全訂7」 1006頁
年次有給休暇の時期指定義務
(1)年次有給休暇は、原則として、労働者が請求する時季に与えることとされています。
(2)しかし、年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対しては、年次有給休暇の日数のうち年5日について、使用者が時季を指定して取得させることが必要です。
年次有給休暇の事前申請の義務
(1)年次有給休暇については、事前の申請を義務付けてもかまいません。
(2)例えば、1ヶ月前に申請しなければならない、と規定することは、労働者の自由を著しく制限するので違法だとされます。
(3)就業規則にて、「1週間前までに申請しなければならない。」と義務付けることは有効だといわれています。
(4)なお、従業員が病気で休んだ場合に、従業員の同意が得られるのであれば、会社の方で、事前申請が無くても、年次有給休暇だと認めることは可能です。
時季変更権
従業員の年次有給休暇の請求について、以下のような特別な事情がある場合には、会社は年次有給休暇の日を変更する権利があります。
時季変更権を行使できる例 会社の1年に1度の繁忙期などの、特別の繁忙期である場合 同じ日に多くの労働者が同時に休暇指定した場合 体調不良者が重なって、代替要員の確保ば難しい場合 本人が出なければならない研修などがある場合 本人でなければ処理できない重要な仕事(出張)がある場合 有給休暇取得の申請が休暇の直前だったケース |
参考
安西愈「新しい労使関係のための労働時間・休日・休暇の法律実務 全訂7」 1046頁以下
年次有給休暇に対して支払うべき賃金
年次有給休暇に対しては、原則として、①労働基準法で定める平均賃金、②所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金、③健康保険法に定める標準報酬月額の30分の1に相当する金額のいずれかを支払う必要があり、いずれを選択するかについては、就業規則などに明確に規定しておく必要があります。
年次有給休暇の起算点
(1)従業員の入社時期が異なると、年次有給休暇の計算が面倒になります。
(2)そこで、年次有給休暇の起算点を、前倒しに変更して他の社員と統一することは許されます。
年次有給休暇の時効
(1)年次有給休暇は2年で時効となります。
(2)もっとも、会社が時効となった年次有給休暇を認めることも許されます。