判例(雇用契約に期限を定めた趣旨が労働者の適性を判断するためのものであるときには、その期間は有期雇用ではなく、試用期間である。)
2024/02/10 更新
神戸弘陵学園事件(最判平成 2 年 6 月 5 日 民集44巻4号668頁)
事案
(1)高校は教員経験のない者を学校の先生として1年間の期限付きで雇用した。
(2)期間が1年になったのは、学校教育は1年単位行われるから、ひとおりの経験を経てその者の適性をはんだんするためのものであった。
(3)高校が労働者を1年間の期限付きで雇用したのは、その者の適性を判断するためであった。
判決の内容
雇用契約に期限を定めた趣旨が労働者の適性を判断するためのものであるときには、その期間は有期雇用ではなく、試用期間である。
解説
(1)試用期間の満了は有期雇用の雇用契約の満了とは異なります。期間満了だけを理由にして雇用契約を終了させることはできません。試用期間の満了を理由とする雇用契約の終了は一種の解雇です。普通解雇と比べると要件が緩和されると言われているが、合理的理由が必要となります。また、解雇ですので、解雇予告手当の支払い義務も問題となります。
(2)神戸弘陵学園事件(最判平成 2 年 6 月 5 日民集44巻4号668頁)は、 新規採用においてその適性を評価するための期間として期限付の雇用契約を締結した場合には、その期間は契約の存続期間ではなく、試用期間であるとした判例です。なお、同事件については、「有期契約」の事案であるのか曖昧な事案であり、特殊性があるとの指摘もあります。
(3)これに対して、九州女子短大事件(最判平成28年12月1日)では、1年の有期雇用を締結し、規定には更新限度を3年とする旨の定めがある事案で、3年での雇い止めを有効とした事案もあります。
(3)契約更新を約束している場合や、ほとんどの社員について契約更新しているのに、不出来の社員についてのみ契約更新を拒否している場合には、試用期間であると認定される方向に働くでしょう。
(4)売上の上下が激しく来期の仕事があるか不明な場合や、繁忙式の一時的な仕事の募集の場合など、仕事・業務の性質によって一時的に人を雇う場合には、雇用期間であると認定される方向に働くでしょう。
(5)「3か月~1年間等一定期間に限り雇用する。」旨の雇用契約を締結しているからといって安心できませんが、会社の立場からすれば、有期雇用は「期間の満了を理由として雇用契約が終了したと主張できる」有力な交渉材料となります。リスクを知りながらも、有効活用していくべきです。
参考
ビジネスガイド2024年3月号105頁