Q 下請業者の社員(が加入する労働組合)と団体交渉に応じる義務がありますか。
2025/06/25 更新
労働組合法の使用者
(1)労働組合法3条は、会社の指揮監督下で労務を提供して賃金を得る、労基法及び労働契約法上の労働者に限られず、会社との関係で同様の力関係にある者を含みます。
(2)労働組合法が上記のような解釈をするのは、労働関係について話し合いを促進するために、実質的にその労働者の勤務関係を支配している者について、団体交渉に応じる義務を認めるためです。
判例
最裁平成7年2月28日民集49巻2号559頁
1 事案
(1)Y社は、テレビ放送事業を営んでいる。Y者の業務をした受けをしている請負会社に所属している社員X(が加入する労働組合)が、Y者に対して団体交渉を申し入れた。
(2)Y社が、団体交渉の義務を負う、労働組合法3条の使用者にあたるかが問題となった。
2 判決
(1)事業主が雇用主との間の請負契約により派遣を受けている労働者をその業務に従事させている場合において、労働者が従事すべき業務の全般につき、作業日時、作業時間、作業場所、作業内容等その細部に至るまで事業主が自ら決定し、労働者が事業主の作業秩序に組み込まれて事業主の従業員と共に作業に従事し、その作業の進行がすべて事業主の指揮監督の下に置かれているなど判示の事実関係の下においては、事業主は、労働者の基本的な労働条件等について雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にあり、その限りにおいて、労働組合法七条にいう「使用者」に当たる。
(2)Xを組合員とする団体交渉に対しYはこれに応じる義務を負う。
なお、Y社の対応が不当動労行為にあたるかは、控訴審に差し戻して審理し直す。
解説
(1)団体交渉の申し入れができるのは、その会社の社員に限られるのが原則です。
(2)しかし、その企業が下請業者の社員の作業時間、作業場所、作業内容を決定し、実質的に、実質的にその労働者の勤務関係を支配している場合には、下請業者の社員(が加入する労働組合)と団体交渉に応じる義務があるとされました。
参考
ビジネスガイド2025年7月号76頁以下