Q 退職時に支払う解決金は、税法等を考慮すると、どのような名目にするのがよいですか。退職合意にどように記載すればよいですか。
2025/06/12 更新
例
和解条項では、解決金の名目・金額と、支払い方法に分けて以下のように記載するのが通常です。
第◯条 解決金 (1)甲は、乙に対し、解決金として◯万円を支払う。 (2)甲は乙に対し、前項の金員を、令和◯年◯月◯日までに、乙指定の下記の口座に振り込む方法によって支払う。ただし、振込手数料は甲の負担とする。 ◯◯銀行 ◯◯支店 普通 口座番号◯◯ 口座名義 ◯◯◯◯ |
解決金、退職金、未払賃金
(1)解決金の支払い名目としては、解決金、退職金、未払賃金が考えられます。
(2)解決金とする場合には、非課税となる損害賠償請求金の受け取りと考えることになります。
(3)退職金の場合には、所得税の源泉徴収が必要です。
(4)未払給与の場合には、所得税の源泉徴収だけでなく、過去年度の社会保険(雇用保険を含む)のやり直しまで必要になります。
(5)源泉徴収ということは会社がそのお金の一部を控除して、会社が税務署にそのお金を支払う必要が出てきます。
つまり、源泉徴収義務が発生した場合に、会社はこれに気が付かずに解決金を支払ってしまうと二重払いの危険があります。
税法と解決金
(1)理論的な税法の考え方からすれば、給与相当額の解決金は実質を考えれば賃金です。したがって、未払給与として扱って、所得税の源泉徴収だけでなく、過去年度の社会保険(雇用保険を含む)のやり直しまで必要になると考えるべきケースが多いでしょう。
(2)もっとも、裁判では、未払給与の元金が132万円で、遅延損害金が2年間で30万円以上になるから、裁判所としては、150万円を裁判所和解案として提案することもあります。
(3)現実的には、解決金の実態について明確に出来ないことが多いです。
実務と解決金
(1)裁判上の実務としては、解決金として、非課税となる損害賠償請求金の受け取りと処理することが多いです。
(2)和解書に、「本件解決金として」という文言がある以上は、税務署もこれを否認して課税してくることが考えにくいといえます。
税理士からの問い合わせ
(1)もっとも、和解後に、税理士からの問い合わせがあることもあります。
「この和解書記載の和解金の性質を教えてほしい。」と問い合わせがあります。
(2)このときには、「裁判上の実務としては、解決金として、非課税となる損害賠償請求金の受け取りと処理すること」「和解書に、「本件解決金として」という文言がある以上は、税務署もこれを否認して課税してくることが考えにくい」ことを説明します。
(3)税理士と言えども、裁判上の解決金の仕分けをすることはほとんどなく、仕方ありません。
税理士への問い合わせ
もっともトラブルを避けるためには、会社に和解条項をチェックしてもらうときには、税務上の問題を説明したうえで、税理士にもチェックしてもらいたい、と伝えるのがよいでしょう。