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労使紛争

判例(会社の都合で、フルタイム出勤からシフト制に労働条件を変更しようとしたが、労働者の同意がなく無効とされた)

2025/09/14 更新

東京地判令和3年12月21日

1 事案

(1)平成30年12月末、Xは医師で、医療法人Yと雇用契約を締結していた。

 Xの業務は、患者の自宅まで行って往診等をすることであった。

 Xの勤務は、平成31年3月で27日間、同年4月で26日間、令和元年5月で30日だった。

(2)平成31年6月、医療法人Yは、週2日程度に勤務日数を削減してほしいと、ライン等で連絡した。

 なお、医療法人Yが勤務日数を減らした理由は、登録医師が増え、他の医師にも仕事を振り分けるためであった。

(3)これに対して、Xは、「週3~4日程度は定期的に勤務したい。」と返事し、6月以降の労働条件を明確化した労働条件通知書の提出を求めた。医療法人Yは、「Xだけ特別扱いは難しい。週2日程度の勤務になる。」と拒否した。

 また、Xは、(医療法人Yが提出してきた)6月以降の労働条件通知書への書面を拒否した。

(4)医療法人Yは、Xの出勤日を減らし、同年6月は9日間,同年7月は10日間,同年8月は8日間,同年9月は3日間であった。(事実上、フル出勤状態となっていた。)

(5)Xは、令和元年9月18日を最後に、医療法人Yでの勤務を行っていない。

 判決

(1)フルタイム出勤からシフト制への労働条件の合意は成立していない。

(2)出勤日数を不当に減らされたことについて、その期間、Xは他の病院で勤務し、その収入が差額の6割を超えていたことから、減額された額の6割の請求を認めました。

(3)Xは解雇を主張しているが、解雇の事実は認められない。

Xは、令和元年9月18日を最後に,医療法人Yでの勤務を行っていないが、これはXの判断によるものである。

(4)よって、令和元年9月18日以降の賃金の請求は認められない。

東京地判令和3年12月21日
労判1266号44頁

解説

1 固定の勤務日及び勤務時間の合意

(1)Xと医療法人Yが締結した雇用契約書には、勤務日や勤務時間の記載はなかった。

(2)しかし、Xと医療法人Yの個々のやりとりや、実際の勤務状態を考慮して、固定の勤務日及び勤務時間(フルタイム出勤)の合意が認められた。

2 シフト制への変更の合意について

(1)Xと医療法人Yの個々のやりとりを考えると、シフト制への変更の合意を認める要素はない。

(2)変更の合意が認められなかったのは当然である。

3 強引なシフトの変更と解雇

(1)一般的な従業員の場合に、シフトを減らされれば生活できなくなり、やめるしかなくなる。

(2)しかし、本件では、解雇の事実は認めなかった。

(3)Xが医師であり、減った日数について別の医院でも働けるということが考慮されたのであろう。

4 解雇が認められなかった

(1)解雇を認めれなかったことから、Xと医療法人Yの雇用契約は残ったままとなる。

(2)Xとしては、退職するのか、それとも、Xが復職をするのか検討することになる。

参考

 ビジネスガイド2025年10月号92頁

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