判例(飲酒運転等を理由とする懲戒解雇を理由に退職した公務員について退職金の不支給としたことに違法がない。)
2025/03/27 更新
最判令和6年6月27日
概要
(1)地方公共団体の職員が、飲酒運転を理由とする懲戒免職処分を理由に退職した。
(2)地方自治体は、同職員に対し退職手当の全部を支給しないとする処分した。
(3)同職員は、上記の処分の取消訴訟を提起した。
判決
(1)判決は、以下の事情を考慮すれば、退職金の全部を支給しないとした処分は、適法であ。退職金の全部を支給しないとした処分は、社会観念上著しく妥当を欠くものではない、と判断しました。
(2)判決は、以下の事実を考慮して、「退職金の全部を支給しないとした処分は、社会観念上著しく妥当を欠くものではない。」と判断しました。
職員は飲酒運転をし、2回の事故を起こしながらそのまま運転を継続した。
職員は、事故後、警察官に対し、事故の発生日時について虚偽の説明をした。
職員は、当時、課長の職にあり、飲酒運転は公務に対する住民の信頼を大きく損なうものであった。
最判令和6年6月27日判決
判例タイムズ1529号53頁
解説
1 社会通念審査
(1)公務員の退職手当支給制限処分の適否につい ては、最三小判令 5.6.27 民集77巻5号1049頁,、判夕1513号65頁 (以下 「令和5年最判」 とい う。)は、退職手当の全部又は一部の不支給についての行政庁の判断を尊重すべきである。退職手当の全部を支給しないとした処分の判断が、社会観念上著しく妥当を欠いて裁量権の範囲を逸脱し、または濫用したものと言える場合に違法となる、という基準で判断すべきであるとしました。
(2)社会観念上著しく妥当性を欠く場合に違法となる基準は、社会観念審査とも呼ばれます。
(3)公務員の懲戒処分等については、同社会観念審査にて審査するのが判例の基本的な考え方になっています(神戸関税事件判決、最判昭和52・12・20民集31巻7号1101頁)。
したがって、公務員の退職手当支給制限処分につい ても、特別に基準で判断するという理由がなければ、社会観念審査(社会観念上著しく妥当性を欠く場合に違法となる)という基準で判断することになります。
(4)社会観念審査で審査するということは、裁判所がその判断の当否を判断するのではなく、行政庁の判断過程を認定し、特に問題があるかないかを判断することになります。
そのうえで、職員の、飲酒運転処分等が重大な違反であるとして、「退職金の全部を支給しないとした処分は、社会観念上著しく妥当を欠くものではない。」と判断したものです。
2 一般企業の退職金の全部又は一部不支給
本件の判断は、一般企業の退職金の全部又は一部不支給の判断について、直接参考になるものではない、と言われています。
3 補足
(1)この判決には、退職手当の全部を支給しないこととする処分を行う場合には、一般の退職手当に給与の後払的な性格や生活保障的な性格があることに着目し、この観点から、非違行為の内容及び程度等につき、当該退職者の勤続の功を完全に抹消するに足りる事情があったとまで評価することができるか慎重に検討する必要があるとする岡裁判官の反対意見が付されています。
(2)なお、、同意見は、公務員の退職手当支給制限処分につい て、社会観念審査(社会観念上著しく妥当性を欠く場合に違法となる)という基準で判断するという前提とは矛盾するものとなります。