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労使紛争

判例(職務限定の合意)

2024/10/05 更新

判例

(1)福祉用具について、改造、制作、開発等の業務を行うべき技術職として採用されていた社員について、職務限定の合意が成立する。

(2)職務限定の合意が成立する場合には、労働者の個別の同意がなければ、同合意に反する移動命令は違法となります(労働契約法8条)。

 最判令和6年4月26日

 判例タイムズ1523号80頁

 https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=92928

職務限定の合意

(1)雇用条件通知書には、採用直後の業務内容が記載されているから、雇用条件通知書に記載があるだけではは、職務限定の合意は成立しません。

(2)長年、同一の業務に従事してきたことだけでは、職務限定の合意は成立しません。

(3)これに対して、医師、看護師、運転手など、特殊の技能が必要な職種について採用時にこれらの技能を持つことを前提に採用した場合には、明示又は黙字の職種限定の合意が成立します

職務限定の合意と異動命令

(1) 職務限定の合意が成立する場合には、労働者の個別の同意がなければ、同合意に反する移動命令は違法ととなるのが原則です(労働契約法8条)。

(2)「経営の理由により当該職種が廃止されたなど、異動を命じる正当理由があれば、職務が変更となる職種への異動を命じてもよい。」という考え方もあります。・・・(ア)このように考えたほうが、労働者は、雇用を維持して働くのか、それとも退職をするのか選択できるからです。 (佐々木 宗啓ほか「類型別 労働関係訴訟の実務〔改訂版〕I 」290頁以下)

(3)しかし、当該職種が廃止される等の事情がある場合には、労働者に配置転換を打診し、労働者が同意しない場合には、解雇等の当否として処理すべきだとされています。・・・(イ)

 つまり、当該職種は廃止されることは整理解雇の一種となり、①人員削減の必要性、②解雇回避義務の履行、③解雇者選定の妥当性、④手続の妥当性が要求されます。

 また、②として、労働者に適切な配置転換を打診しているかも問題になる、と言われています。(判例タイムズ1523号80頁の解説)

(5)判例タイムズの解説では、本判決では、(イ)の見解をとったものと解説されています。

(6)従来の判例では、上記のような拘束力を持つ職務限定合意が認められる例は少なかったのは、(イ)の効果が認められる合意ではなかったためと言われています。

 職務限定合意を認めるのであれば、(イ)のように解釈されるべきである。

 そして、職務限定合意が認め慣れない場合には、「異動を命じる正当理由があれば、職務が変更となる職種への異動を命じてもよい。」ということになります。つまり、(ア)と同じ考え方で処理されることになります。

解説

(1)本判決は、「福祉用具について、改造、制作、開発等の業務を行うべき技術職として採用されていた社員について、職務限定の合意が成立する。」と判断しました。

(2)職務限定の合意が成立する場合には、労働者の個別の同意がなければ、同合意に反する移動命令は違法となります(労働契約法8条)。

(3)なお、本件では、職務限定に反する配置転換命令がされたを理由として不法行為に基づく損害賠償請求がされています。しかし、本件で、本件配置転換命令が不法行為を構成すると認める事情があるかについては、審理する必要があるとして、第一審に差し戻されました。

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