【有期雇用】有期雇用と、その手続
2024/02/14 更新
有期雇用
(1)有期雇用とは、3か月~1年間等一定期間に限り雇用する期限付きの雇用契約であります。
(2)有期雇用の場合には、会社が合わないと判断すれば期間満了で雇用契約を解消できる、とのメリットがあります。
(3)しかし、以下の点で注意が必要です。
雇用条件通知書の記載
有期雇用にする場合には、雇用条件通知書にて、雇用期間(3か月~1年間等)を記載しなければなりません。
①雇用期間
「期間の定め無し」とするか、「雇用の期間(例えば、令和5年3月1日~ 令和5年7月末日までとする)」を記載しなければなりません。
②更新の有無と更新についての基準
(1)有期雇用とした場合に、「契約の更新をしないのか。」それとも、「契約の更新をする場合があるのか。」を記載します。
(2)「契約の更新をする場合がある」ときには、どのような要素を考慮して、更新をするのかを、を記載します。
具体的には、「業務量、勤務態度、勤務成績、会社の経営状態、従事している業務の進捗、これらと同様に重要な事実を考慮して、契約更新をするかどうか、を決める。」と記載しておけば大丈夫です。
③更新の上限
(1)令和6年4月1日により、有期雇用について、通算契約期間(通算契約期間は3年とする)や更新回数(更新は3回まで)の条件を定める場合には、その旨を雇用条件通知書に記載する義務があります(労働基準法施行規則の改正)。
(2)令和6年4月1日により、有期雇用について、初回の契約時には、更新上限を設けていなかったが、その後に更新上限を設ける場合や、期間等を引き下げる場合には、上限を設ける前にその理由を説明しなければならなくなりました(有期契約労働者の雇止めや契約期間について定めた厚生労働大臣告示(有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準)の改正)。
参考
ビジネスガイド2024年2月号6頁
④無期転換権
(1)更新を繰り返し、契約期間が通算して5年を超えると、期限の定めのない無期雇用に変更してほしいと請求する権利が発生します。これを無期転換申込権といいます(労働契約法18条)。
(2)5年を超えて契約を更新する場合には無期転換権が発生します。令和6年4月1日により、無期転換申込権が発生する場合には、「無期転換申込権が発生します。」等の記載が必要です(労働基準法施行規則の改正)。
(3)以下のように、契約終了時において無期転換請求権が発生しない場合には、無期転換申込権について記載する必要はありません。
定年後再雇用 | 有期雇用特別措置法 定年後引き続いて雇用される従業員については、有期雇用特別措置法の特定の手続をすれば、無期転換権が発生しません。 この場合には、無期転換申込権の記載は不要です。 |
更新の上限 | 更新の上限 契約更新の上限を設ける場合には、有期雇用の契約期間を通算契約期間(通算契約期間は5年以内とする)や更新回数(更新は5回までとする)との条件を定める場合には、契約期間が通算して5年を超えませんので、無期転換申込権は発生しません。 この場合には、無期転換申込権の記載は不要です。 |
契約終了時が初期契約から5年以内となるとき | (1)5年を超えて契約を更新する場合には無期転換権が発生します。令和6年4月1日により、無期転換申込権が発生する場合には、「無期転換申込権が発生します。」等の記載が必要です(労働基準法施行規則の改正)。 (2)例えば、1年契約の有期雇用を締結した1年目の雇用条件通知書については、その契約終了日に無期転換申込権は発生しません。 この場合には、無期転換申込権の記載は不要です。 |
⑤無期転換申込権の記載のポイント
(1)この契約(書)について無期転換申込権を記載すべきかどうか、管理するためには、「(初期契約日 令和 年 月 日、同日から5年間を経過した日の翌日から無期転換を申し込める。)」と記載する方法が分かりやすいでしょう。
(2)少なくとも、「(初期契約日 令和 年 月 日)」の記載欄を作っておきましょう。
⑥契約期間その他記載例
契約期間 | ( )期間の定めなし 令和 年 月 日~ (〇)期間の定めあり (令和6年4月1日 ~ 令和7年3月末日) |
契約更新の1有無 更新の上限と、無期転換申込権 | ( )更新しない (〇)更新する更新する場合がある。更新する場合には、契約期間満了時の業務量、勤務成績、態度、会社の経営状況、従事している業務の進捗状況を考慮する。 (〇)更新の上限あり。(更新 回まで/通算期間5年) 無期転換申込権が無し ( )更新の上限なし。 無期転換申込権あり。(初期契約日 令和 年 月 日、同日から5年間を経過した日の翌日から無期転換を申し込める。) |
労働条件通知書の更新(契約更新)
(1)有期雇用の期間を超えて雇用し続けて、労働条件通知書の更新(契約更改)をしなければ契約が同一の条件をもって更新されたとみなされ(民法629条1項)、期間の定めのない契約に変更されてしまいます(通説)。
(2)契約期間を経過した後も何ら手続がされていなければ、「このまま雇い続けてくれるだろう」という更新してくれるだろうという期待が生じるのは、当然であり有期雇用は期限の定めのない無期雇用と同様の扱いとなる可能性があります(労働契約法19条)。
(3)そのような期待を生じさせないためには、契約の更新時に、雇用条件通知書を交付して、契約の巻き直しが必要です。
労働条件通知書と労働者の署名
(1)確かに、雇用契約を含む契約は口頭でも成立します(労働契約法6条)。しかし、企業側が労働条件通知書を出し社員がこれに署名していれば、労働条件通知書は実質的には雇用契約書にあたり、労働条件通知書どおりの雇用契約が成立したと認定されるのが通常です。
(2)例えば、労働条件通知書に期間の定めを設けていても、労働者が「労働条件通知書を受け取っていない。」との嘘を言われたときのことを考えると、労働者から署名をもらった上で同労働条件通知書を企業側が保管するようにすべきです。
更新の上限
(1)令和6年4月1日により、有期雇用について、通算契約期間(通算契約期間は3年とする)や更新回数(更新は3回まで)の条件を定める場合には、その旨を雇用条件通知書に記載する義務があります(労働基準法施行規則の改正)。
(2)令和6年4月1日により、有期雇用について、初回の契約時には、更新上限を設けていなかったが、その後に更新上限を設ける場合や、期間等を引き下げる場合には、上限を設ける前にその理由を説明する必要があります(有期契約労働者の雇止めや契約期間について定めた厚生労働大臣告示(有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準)の改正)。
5年以内の雇い止め
(1)法律上の規制としては、契約満了時の1ヶ月前には、雇い止めとなることを有期雇用労働者に説明すれば足ります。
(2)しかし、有期雇用契約者にも生活があります。更新をしないことが決まっている場合には、早々に「更新の上限」について雇用条件通知書に記載して、有期雇用労働者に説明する必要があります。
有期労働契約の締結、 更新及び雇止めに関する基準 第2条 (雇止めの予告) 使用者は、 有期労働契約 (当該契約を三回以上更新し、又は雇入れの日から起算して一年を 超えて継続勤務している者に係るものに限り、 あらかじめ当該契約を更新しない旨明示されているも のを除く。 次条第二項において同じ。) を更新しないこととしようとする場合には、少なくとも当該契約 の期間の満了する日の三十日前までに、 その予告をしなければならない。 (平二〇厚労告一二・一部改正) |
無期転換後の労働条件の明示
①、無期転換申込権
(1)更新を繰り返し、契約期間が通算して5年を超えると、期限の定めのない無期雇用に変更してほしいと請求する権利が発生します。これを無期転換申込権といいます(労働契約法18条)。
(2)契約終了時が初期契約から5年を超える場合には、「無期転換申込権が発生します。」等の記載が必要です(労働基準法施行規則の改正)。
②無期転換後の労働条件の明示
(1)契約終了時が初期契約から5年を超える場合には、「無期転換申込権が発生します。」等の記載だけでなく、無期転換後の労働条件の明示必要です(労働基準法施行規則の改正)。
(2)具体的には、無期転換後の労働条件を記載した労働条件通知書とほぼ同じものを作って、これを従業員に交付することになるでしょう。
(3)なお、全く同じものとしてしまうと、無期転換申込権の行使をしたのか、していないのか不明確になります。「無期転換後の労働条件の明示です。同条件での契約の締結には、文書による無期転換申込権の行使が必要です。」等の記載を入れておきましょう。