出向の法的性質
2023/12/03 更新
出向の法的性質
(1) 出向元との労働契約を残しながら、出向先と労働契約を締結します。
労働者は出向先との労働契約が残っています。出向期間が終了すれば労働者は出向元に戻ります。
労働者は出向先で働きますが、出向元での待遇が保障されます。
(2)出向元と出向先との間で出向契約が必要になります。
出向の場合には、出向元の待遇を維持しながら、出向先での業務をしてもらうことになります。出向元の待遇を維持する前提ではありますが、勤務時間、勤務日数、日々の報告、人事評価出について出向先での業務に合わせて変更する必要が有ります。また、これらが円滑に運用できるように、出向元と出向先との間で取り決めが必要です。これが出向契約です。
(3)出向後は、労働者は出向先で出向先の仕事をします。しかし、労働者が、出向元の仕事をしながら、出向先の仕事をすることもあります。
(4)出向の場合には、出向元の待遇を維持します。したがって、会社は、業務命令の範囲で出向を命じることができ、社員の同意は不要です。
出向元のメリット
(1)年功序列制度のもとで、役職者のポストが不足し、余剰人員が出てくるために、出向先を見つける必要が出てきます。
(2)事業を整理した場合に、その事業で働いていた人員について、出向先を見つける必要が出てきます。
(3)新規事業の立ち上げのために、他者との人材の交流が必要になります。
(4)出向元としては、個別同意がなくても、業務命令の範囲で出向を命じることができます。
出向元の経済的負担
出向元の賃金基準は、出向先の賃金基準より下がることが通常です。通常は、出向元が賃金を支払い、出向先が出向先の基準での賃金相当額を出向元に支払います。したがって、出向元が一部の賃金を負担することになります。
出向先のメリット
(1) 出向先(身元)がはっきりしており、出向する人材の質が保障されていいます。
(2)出向する人材も、出向元の顔もあり、まじめに働くことが期待できます。
(3)出向してきた人材がマッチングしなかった場合に、解雇せずに出向の取消しを交渉できます。
(4)他分野の知識を持った人材を確保できます。
出向における事務負担
(1)待遇面では、出向元の基準を維持する必要があります。しかし、出勤時間、出勤日数、人事評価その他の面で出向先に合わせる必要があり、出向先と出向元でこれらを調整するための決まり等が必要になります。
(2)出向元、出向先双方にとってメリットができるマッチング先を見つける必要があります。
出向と法的トラブル
(1)出向の場合には、出向前の基準と同様の待遇を保障することが前提です。
(2)したがって、会社と労働者が対立することはほとんどありません。
労働者供給との違い
(1)労働者供給は違法です。
(2)他者に労働者の提供を「業として行う」と、労働者供給となり違法です。
以下の目的で行う場合には、「行として行う」にはあたりません。
①労働者を離職させるのではなく、関係会社において雇用機会を確保する
②経営指導、技術指導の実施
③職業能力開発の一環として行う
④企業グループ内の人事交流の一環として行う
労働者派遣との違い
労働派遣と出向の違いについては、出向元と出向先との間の出向契約により、労働者を出向先に雇用させることを約して行われていることから、労働者派遣とは違うと説明されています。