判例(従業員のスキルアップのための留学費用について退職時に返済を求める合意は労基法16条に違反しない)
2025/04/13 更新
スキルアップの学費について退職時する合意
働基準法5条は「強制労働の禁止」を定めている。退職時に貸付金の返金を求めたり、貸付金を返済するまで退職を認めないことは、実質的に労働を強制するものであるとして、労働基準法16条に違反しないか、問題となる。
労働基準法16条(賠償予定の禁止) 使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。 |
東京高判令和4年12月14日
事案
(1)従業員は、会社から貸付金を受けて、留学をした。
(2)従業員が退職したところ、会社は留学に伴う貸付金の返済を求めた。
裁判所
(1)裁判所は、以下の理由から、会社の貸付金の返金請求を正当だと判断しました。
(2)従業員は、留学は会社の業務指示だったと主張していますが、従業員が、留学する大学、履修する科目を自ら選択していること、契約、紛争解決、交渉などの汎用性が高いと考えられる科目も 多く含んでおり、留学によって従業員のスキルにとって大きなプラスになること、貸与金総額は従業員の年収に比して過大ともいえないを考慮して、同合意に違法はないとしました。
東京高判令和4年12月14日
参考
ビジネスガイド2025年5月号96頁