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労使紛争

判例(有期雇用であると認められなかった事例)

2023/04/14 更新

判例の概要

(1)事案

 会社と社員の間では、「(雇用)期間の定めのない。」との前提で労働契約を締結する方向で話を進めていた。入社後、2週間後に、会社は特段の説明もなく「(雇用)期間の定めあり。」と書かれた労働条件通知書を手渡し、社員はこれに署名した。

(2)裁判所の判断

 裁判所は、「(雇用)期間の定めのない。」との前提で雇用契約が一度成立しており、「(雇用)期間の定めあり。」との労働条件通知書への署名した行為をもってしても、(雇用)期間の定めのある労働契約には変更されないと判断した。

名古屋地裁 令和2年1月21日
判例タイムズ 1485号189頁以下

解説

(1)有期雇用

 有期雇用とは、3か月~1年間等一定期間に限り雇用する期限付きの労働契約です。

 有期雇用の労働契約を「期間の定めのある」契約と呼ぶことがあります。有期雇用の場合には、期間満了時に更新するのか、どうかは話し合いになります。どちらか一方が更新を拒絶すれば、雇用契約は終了します。

(2)無期雇用

 無期雇用の労働契約を「期限の定めのない」契約と呼ぶことがあります。
 無期雇用は、定年まで雇用する契約と理解すればよいでしょう。

(3)判例の結論の妥当性

 有期雇用なのか、無期雇用なのかは、重要な労働条件の問題です。

 もともと、無期雇用を前提に話し合いをしておきながら、会社は特段の説明もなく「(3か月~1年間等一定期間に限り雇用する」と書かれた労働条件通知書を手渡し、社員がこれに署名したとしても、無期雇用に変更されないというのは当然でしょう。

(4)ポイント

 会社側としては、有期雇用として雇用したのか、それとも、無期用として雇用するのかは、会社で保管されている文書で管理するしかありません。しかし、解雇等の雇用契約の終了が問題となるのは、入社後数ヵ月が経過した時点となります。

 契約は口頭でも成立します。書類だけでなく、実体(当時、具体的にはどんな話し合いがされたのか。)が重視されます。しかし、事後的に実際どうだったのか把握するのは困難です。

 したがって、有期雇用の契約書(期間の定めのある契約書)があるからといって、安易に、期間満了時を理由に雇用契約を終了させてはなりません。
 雇用契約の終了の1ヶ月前には、社員に「期間満了時を理由に雇用契約を終了させる」予定であることを通知し、社員が異議を述べた場合には、しっかりと事実確認する必要があることを示しています。

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