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労使紛争

労働者の退職の意思と自由意志法理

2025/03/09 更新

労働者の退職の意思

 労働者の退職の意思については、労働者が退職の意思を示したと理解できる文書を送ったが、後に撤回するなどして、その解釈が争わることがよくあります。す。

退職願いと退職届

(1)退職願は、社員が会社に対して、退職したいと思っているとの相談です。

(2)退職届は、社員が会社に対して、一方的に労働契約を解約する意思表示です。

(3)両者の区別は、社員の退職に向けた意思が「退職する。」という確定的な意思を示す内容だと理解できるかどうか、です。

(4)なお、退職届(社員が会社に対して、一方的に労働契約を解約する旨の意思表示)であると認定されるものである場合、会社に到達した時点で効力が生じますので、それ以後は撤回できません。

退職時と自由意志法理

(1)確かに、退職金債権の放棄や、労働条件の変更などについての労働者の同意については、労働者は雇用主から求められるがままに不利益を受け入れる行為をせざるを得なくなるような状況に置かれることも少ないことから、「自由な意思と認められる合理的な理由」を検討して慎重に意思表示の存否を判断することが要請されます(山梨県民信用組合事件判決に関する判例解説(法曹時報70巻1号317~321頁)参照)。
(2)これに対し、退職届の提出という局面においては、労働者において明確に認識している場合が通常であり、上記各最高裁判決の判旨が直ちに妥当しません。
 したがって、退職の場合には自由意志法理が適用さません。つまり、労働者の同意が認定できるか、のみが問題となります。

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