社員が会社に損害を与えた場合に、会社は社員に損害賠償請求できるか。
2024/02/17 更新
社員が会社に損害を与えた場合
社員が会社に損害を与えた場合、よくある問題は以下の3つに分類できます。
使用者責任
(1)社員が仕事中に第三者に損害を与えた場合、第三者に対し社員だけでなく、会社も損害賠償義務を負います(使用者責任)。
(2)会社は第三者に対し賠償した後に、会社は従業員に対しその額の一部を請求できます。これを求償権といいます(民法715条3項)。
(3)会社は危険が伴う業務をして収益を上げていながら、その危険が現実化した場合にその責任を従業員に負担させるのは公平でないと考えられます。
(4)裁判例では、従業員に故意、重過失が認められる場合には、従業員に対し高い割合での求償を認めます。
そうでない場合には、賠償額の4分の1が請求の上限となります。
軽過失の場合には、全額免責されることになります。
参考
ビジネスガイド2023年1月号37頁
最判昭和51年7月8日(茨城石炭商事事件)
上記判例は、使用者責任が認められる事案で、会社が第三者に損害賠償した後に、会社が従業員に対しその額の4分の1を請求することを認めました。
逆求償
(1)社員が仕事中に第三者に損害を与えた場合、第三者に対し社員だけでなく、会社も損害賠償義務を負います(使用者責任)。
(2)従業員が第三者に損害賠償した後に、従業員は会社に対しその額の一部を請求できるでしょうか。これを逆求償といいます。
最判令和2年2月28日(判例タイムズ1476号60頁)
(1)上記判例は、従業員が第三者に対して使用者責任に基づく損害賠償義務を履行した場合には従業員は、その事業の性格、規模、施設の状況、被用者の業務の内容、労働条件、勤務態度、加害行為の態様、加害行為の予防又は損失の分散等のその他諸般の事情に照らし、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において、会社に対して求償(逆求償)することができる、と述べました。
(2)同判例は、逆求償を認めた判例です。
会社の不法行為責任
(1)社員が仕事中に会社に損害を与えた場合、会社は社員に損害賠償できるか。
(2)この場合も、会社は危険が伴う業務をして収益を上げていながら、その危険が現実化した場合にその責任を従業員に負担させるのは公平でないと考えられます。したがって、上記と同じ判断枠組みで判断されています。