解雇無効の判決と、公租公課の控除
2025/05/06 更新
解雇無効判決
(1)解雇が無効になれば、会社に対し判決確定日までの給与額の支払いが命じられます。
(2)しかし、会社は給与について、所得税、社会保険(厚生年金など)、雇用保険の源泉義務(控除義務)を負います。
(3)会社が、「解雇が無効になった場合には、所得税、社会保険(厚生年金など)、雇用保険の額について減額するべきである。」という主張は認められるか。
判例は、このような控除を認めていません。
(4)したがって、所得税、社会保険(厚生年金など)、雇用保険について控除が認められず、給与額全額を支払え、との判決が下されます。
判決後の控除
(1)判決では、所得税、社会保険(厚生年金など)、雇用保険について控除が認められません。したがって、給与額全額を支払え、との判決となります。
(2)しかし、会社が従業員に対し任意で支払う場合には、所得税、社会保険(厚生年金など)、雇用保険を控除して支払うことが認められています(高松高判昭和44年9月4日高民22巻4号615頁)。
(3)したがって、判決では、「所得税、社会保険(厚生年金など)、雇用保険について控除が認められず、、給与額全額を支払え」という内容であっても、これらを控除した金額を支払えば、未払賃金全額を支払ったことになります(東京高判例令和6年4月16日判タ1530号76頁)。
参考
判例タイムズ1530号76頁
判決後の交渉
(1) 実際の事案では、遅延損害金等の計算も問題となります。
(2) したがって、弁護士間で、支払日を決めて、その支払日までの遅延損害金を計算して、公租公課の金額を控除した金額について、相互に確認してから振り込むことが多いでしょう。