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労使紛争

試用期間延長後の解雇を無効とした判例

2024/06/19 更新

事案

時系列

 平成30年4月1日にXを入社

 雇用契約上は、試用期間3ヶ月とされていた。

 平成30年6月末日、会社は退職勧奨したが、Xは拒否した。

 平成30年6月末日、試用期間を1ヶ月延長し、Xは同意した。

 平成30年7月末日、試用期間を1ヶ月延長し、Xは同意した。

 平成30年8月末日、試用期間を1ヶ月延長し、Xは同意した。

 平成30年8月、会社はXを解雇した。

就業規則

 就業規則には、試用期間の定めはあったが、試用期間の延長の規定はなかった。

判決

(1)就業規則の最低基準効(労契法12条)があり、就業規則に定めない場合の試用期間の延長は原則許されない。しかし、試用期間の調査で解雇権行使を検討すべき事情があるが、、労働者の利益のために労働者の適正を見出そうとする場合には、術労働者の同意を得て、労必要最低限の延長をすることは許される。

 しかし、本件では、そのような要件を満たさない。

(2)Xにはコミュニケーションに課題があるものの、会社はXに一人学習を続けさせるなど、課題と相容れない指導を実施している。

 会社はXに対し適切な指導をしておらず、退職勧奨を5回も行い、退職勧奨に力を入れていた。

(3)会社の解雇は無効である。

 東京地判令和2年9月28日

 ビジネスガイド2024年7月号92頁

試用期間

試用期間の法的性質

(1)試用期間の満了は有期雇用の雇用契約の満了とは異なります。期間満了だけを理由にして雇用契約を終了させることはできません。

(2)試用期間の満了を理由とする雇用契約の終了は一種の解雇です。普通解雇と比べると要件が緩和されると言われているが、合理的理由が必要となります。また、解雇ですので、解雇予告手当の支払い義務も問題となります。

 試用期間満了による雇用期間の終了には、解雇の手続を経ることが必要です。 

試用期間の効果

(1)試用期間の満了に基づく雇用契約の終了は通常の解雇よりも認められやすい。

(2)試用期間中でかつ、採用後14日以内の解雇の場合には解雇予告手当を支払わなくてよい。

試用期間の延長

(1)試用期間の延長は、労働者の地位を不安定にするものであり、原則認められない、と言われています。

(2)現実問題として、試用期間の延長が必要なケースでは、労働者のパフォーマンスに問題があり、改善することができずに解雇に至ることが多いと言えます。

解説

(1)試用期間の延長後は原則認められません。試用期間の延長後に解雇すれば、延長そのものが有効であると認定される可能性は低いといえます。

(2)本件は能力不足を理由とする解雇ですから、適切な指導監督がされていたことが必要になります。本件ではそれがされていなかったことも問題になっています。

(3)問題社員に対し、①退職勧奨も解決策の一つですが、労働者が同意しなかった場合には、②指導(後の解雇手続)を検討しなければなりません。①②を同時に取り組む必要があります。

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