判例(年俸制の減額が不当である、とされた事例)
2024/02/18 更新
年俸制
(1)年俸制は、従業員の成績等に応じて、毎年、給与額を変更・決定する賃金制度です。
(2)年俸制の場合、給与額の算定基準を合意しているなど、給与の決定方法が定まっていれば、次年度の給与額を下げることができます。会社型の主観的な判断で、給与を決定することはできません。したがって、給与の決定(減額)についてどのようなプロセス(設計を含む)が必要なのかが重要です。
判例
(1)「次年度の年俸額は、当該年度からの昇給率により決定される。」という合意がされていました。会社は、昇給率を機械的に算出する計算書を作成し、同計算書に基づいて、次年度の給与額を下げました。
(2)判決は、会社が提出した計算書は、社員との紛争後に提出されたものであるとして、従前どおりの給与額を支払うべきとの判決を出しました。
東京地裁令和4年2月8日判決
解説
(1)給与の減額は不利益変更になることから、減額については計算式について明確な合意がない限り認められないとした判例だと理解することができます。
(2)給与額を成績に応じて減額する場合には、給与額の計算式を明記した雇用契約書等を締結する必要があります。
参考
ビジネスガイド2022年10月号92頁