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労使紛争

団体交渉の実例

2023/04/03 更新

団体交渉の事前協議

弁護士Cは、労働組合の組合員Dに電話します。

弁護士C

 「A社の代理人の弁護士Cと申します。」

組合員D

 「従業員Bさんの担当の組合員Dと申します。」

弁護士C 

 「団体交渉の日時・場所なのですが、団体交渉申入書の日は都合が付かないので、〇日もしくは×日の午後6時の貸会議室●でよいでしょうか。

組合員D 

 「〇日の午後6時の貸会議室●でよいですよ。」

弁護士C   

 「次に、恐縮ではございますが、団体交渉を誠実に行うことを誓いますので、毎日の従業員Bさんの出社を辞めていただくことは可能でしょうか。」

組合員D 

 「これは、労働者としての闘争活動の一環であり、断固拒否します。」

弁護士C 

 「例えば、別の労働組合さんでは、『仮に解雇が不当な場合には業務命令として自宅待機を命じます。』との文書を送らせて頂いて、『従業員Bさんが解雇を認めたわけではない。』ことを証拠化させて頂いたうえで、団体交渉をしたこともあります。どうでしょうか。

組合員D   

 「そんな文書を送ってくれば、我々の闘争行為を妨害したものとして、直ちに会社前に街宣車を回します。」

弁護士C  

 「団体行動権は適切な団体交渉を行うために認められた権利であり、会社としても団体交渉に応じる姿勢を示している以上、そのような行為にでれば、違法な争議行為として正式に刑事告訴します。」

 「また、今の発言そのものも、違法を阻却されませんので脅迫行為にあたります。」

  (間をおいて)

 「すみません。熱くなりました。会社として団体交渉に応じるつもりですので、毎日の従業員Bさんの出社を辞めていただくことをご検討ください。」

 「私としても、A社から強く希望されていますので、何か手を打たなければならないのが現状です。ここで、ヒートアップして感情的になりたくありません。労働組合内で検討して、このまま出社を続けるのか、●日まで回答ください。」
 「そのときはそのときで、こちらも、先ほどの対応をしなければなりません。」

組合員D  

 「こちらも、従業員Bと話し合っておきます。」

弁護士C 

 「団体交渉申入書で、従業員Bが要求していることを先に教えてもらえませんか。」
 「こちらでも、先に回答を用意したいと思っています。そうした方が、1回分、団体交渉を省略できます。」

組合員D

 「こちらの要求は、(省略)というものです。」

弁護士C 

 「ありがとうございます。A社と検討しして早々に会社としての回答を出させて頂きます。」

(以下省略)

解説
 弁護士Cは、A社の社長Eに対し「毎日の従業員Bさんの出社を辞めていただく約束を取り付けることはできなかった。」ことを報告しました。
 ただ、A社の社長Eからは、従業員Bは最初の3日ほどは出社していたが、その後は出社してこなくなったと聞きました。

事前打ち合わせ

 弁護士Cは、A社の社長Eに以下の団体交渉の基本戦術をレクチャーしました。

団体交渉の場での基本戦術①
(1)文書の内容以上の回答はしない。
(2)団体交渉の場は、基本的には、労働組合側の意見を聞く場であると考えます。
(3)団体交渉で、労働組合が出してきた要求はその場で回答せずに、持ち帰ります。

1 回目の団体交渉

組合員D    

 「お電話させて頂いた、書記の組合員Dです。」

 「まずは、本日の団体交渉について録音させて頂くことをここに宣言したいします。」

従業員B    

 「従業員Bです。」

弁護士C    
 「A社の代理人の弁護士Cです。」

A社の社長E

 A社の社長Eです。

組合員D    

 「まず、団体交渉の申込書を読み上げて頂きます。」

 組合員Dは団体交渉の申込書を読み上げまました。

組合員D    

 「まず、令和4年8月分給与からの減額と、令和5年2月末日での解雇について、合理的理由と根拠をお教え頂きたい。」

弁護士C    
 「既に文書で回答したとおりです。」

組合員D    

 「私からA社の社長Eさんにお聞きします。」
 「『給与のカット』『解雇』という言葉の意味がわかりますか。従業員のBさんが受けた傷というのは理解していますか。」

A社の社長E     

 私は2代目社長で、A社に入る前はいちサラリーマンでした。給与をカットされたこともあります。その苦しみは知っているつもりです。

組合員D 

 「日本の裁判は解雇について厳しい判断をしています。解雇理由なんてあると思っているのですか。」

弁護士C    

 「解雇理由はあると考えたからこそ、解雇処分をしております。詳細は文書のとおりです。」

組合員D    

 「A社の社長Eさんに聞いているつもりです。黙っていてもらえませんか。」

A社の社長Eさん     

 「私も、社員を大事にしないと思っています。私は従業員Bには何度もチャンスをあげたつもりです。」
 「例えば、顧客からのクレームもあり、他の社員の示しもあり、かばいきれずに従業員Bを解雇しました。」

組合員D    

 「一人の社員を切り捨てて、きれいなセリフはいても意味ないと思います。もっと、本音でしゃべりませんか。」

弁護士C    

 「論点がずれていると思います。」
 「減給を根拠づける事実があったのか、解雇を根拠づける事実があったのか、が争点です。」
 「社長がどう思ったかは関係ありません。」

解説
 A社の社長Eもレクチャーどおり、基本的には文書で回答した以上のことは話しません。
 労働組合はA社の社長Eさんに対する個人攻撃をしますが、結局は精神論に終始しました。
 もちろん、弁護士Cも、A社の社長Eが言質を取られかねない発言をすれば、「それはここで約束できないことです。持ち帰ります。」と横やりを入れる予定でした。

C弁護士

 「話が堂々巡りしています。そろそろ一度休憩を入れましょう。」

解説
 感情論の話が続いたので、弁護士Cが割って入って10分間休憩となった。

 

弁護士C    

 「A社の社長Eさんへの事実確認が済んだということで、今度はこちらから従業員Bさんにお聞きしてもよいでしょうか。」

従業員B    

 「はい。」

弁護士C    

 「従業員Bさんが、令和2年4月1日に入社して、コピー機のリースで営業をされており、上司は部長Xさんですよね。」

従業員B    

 「はい。」

弁護士C    

 「令和2年6月ごろ、西村営業所から間違った機械を納品したとして、クレームがありましたよね。」

従業員B    

 「確かにありましたが、それは実際にミスをしたのは、従業員の吉田氏です。」

弁護士C    

 「同じく、令和2年6月ごろ、関西電流から間違った機械を納品したとして、クレームがありましたよね。」

従業員B    

 「確かにありましたが、それは実際にミスをしたのは、従業員の西田氏です。」

弁護士C 
 「西村営業所さんの件では、取引先さんは、従業員Bのミスだと言っていたみたいですよね。」

従業員B

 「それは、西村営業所さんの勘違いです。」

弁護士C
 「次に、関西電流さんの件では、従業員Bさんは『従業員の西田氏の責任である」と説明しましたよね。
 「関西電流さんの件でも、最後に発注確認する必要があり、仮に従業員の西田氏にミスがあっても、従業員Bさんに責任がないわけではないよすよね。」

従業員B

 「それは理解しています。」

弁護士C

 「当時、上司の部長Xさんからミスのないようにとお話がありましたよね。」

従業員B    

 「はい。」

(省略)

解説
 弁護士Cは、このように細かく、従業員Bのミス等を列挙して確認していきました。

弁護士C    

 「以上のおり、A社としては、従業員Bさんの職務態度やその能力不足について指導教育したうえが、改善されないということで職能給を引き下げ、解雇したことになります。」
 「もちろん、解雇予告手当の支払い義務があります。加えて解決金の支払いを考えております。
 「A社の社長Eさんと相談の上、解決金の金額を決めてご連絡をさせて頂きたいと思っております。

組合員E

 「そういう話については、考えないこともないですが、基本的には復職を前提にしてほしいです。」   

弁護士C

 「従業員Bさんも検討するのに時間がかかると思います。
 「本日は、いったんはこれで終わりにしませんか?」

 「A社としては、解決金での解決を希望し、今後はその金額のすり合わせをしたいと思っております。
 「本日はここまでとさせて頂いて、従業員Bさんとして、その方向で交渉を希望されるか、その場合に解決金はいくらか、回答して下されば結構です。」

解説
(1)その日は、後日双方が方針を決めて連絡するということで団体交渉は終了した。
(2)その後は、弁護士Cは組合員Dと何度もか電話で交渉し、会社が200万円を支払う形で和解が決まりました。
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