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労使紛争

判例(「偽装請負」であると認定されて、「労働契約申し込みのみなし」が認めあられた事例)

2024/03/20 更新

「偽装請負」と労働契約申し込みのみなし

(1)形式上は請負契約とされているが、実質は労働者派遣となっている場合(偽装請負)、「労働者派遣法等を免れる」目的(「免れる目的」)がある場合には、請負契約上の発注者(派遣先)は、労働者に対し労働契約の申し込みをしたものとみなされます(労働者派遣法第40条の6の第1項5号)。
(2)なお、偽装請負に該当する行為が終わってから1年以内に、労働者が請負契約上の発注者(派遣先)と雇用契約を締結したいと申し出なければ、その効力は失われます(労働者派遣法第40条の6の第3項)。

判例(大阪高判令和3年11月4日)

1 事案

(1)Y社は、A社と業務請負契約を締結していた。

(2)X1とX2は、A社の社員として、Y社の向上で巾木(はばき)の製造加工の業務をしていた。

(3)平成29年、Y社は業務請負契約を終了させた。A社はX1を整理解雇した。

(4)平成29年、Y社とA社は労働者派遣契約を締結して、A社はX2をY社に派遣した。

(5)平成29年、X1とX2は、「労働者派遣法40条の6の第1項5号(偽装請負)にあたるとして、労働契約の直接雇用の申込みを承諾する。」旨の通知書を送った。

2 偽装請負(実質は労働者派遣)の認定

(1)裁判所は、以下の事実から、偽装請負(実質は労働者派遣)であると認定した。

①形式上は、Y社の指示は、Y社からA社に、A社の現場担当者から、A社の社員(X1とX2)に伝えていた。

 しかし、その指示の内容は、A社で検討された形跡がなく、結局、Y社から、X1とX2に具体的な指示が伝えられていた。

②Y社の社員が、残業等について、A社の社員(X1とX2)に指示を出していた。Y社が、X1とX2の労働時間を決めていた。

③A社の社員(X1とX2)は、有給消化について、Y社の社員に伝えて許可を得ていた。

④製品に問題があっても、Y社とA社との業務請負契約について代金の変更がなかった。不良品のリスクは、請負契約においける注文者のY社が負担していた。

 A社には、製品を作成するノウハウもなかった。

(3)以上より裁判所は、以下の事実から、偽装請負(実質は労働者派遣)であると認定した。

3 「労働者派遣法等を免れる」目的(「免れる目的」)

(1)裁判所は、以下の事実から、「労働者派遣法等を免れる」目的(「免れる目的」を認定したであると認定した。

(2)労働契約申し込みのみなしが適用されるには、派遣先が法人である場合には、法人の代表者もしくは法人から契約締結権限を受験されている者の認識として、「労働者派遣法等を免れる」目的(「免れる目的」)があることが必要です。
 派遣先においては、派遣と請負の区別が困難なあり、客観的に、偽装請負(実質は労働者派遣)であることだけでは、「労働者派遣法等を免れる」目的(「免れる目的」)があるとは認定されません。
 しかし、日常的かつ継続的に偽装請負状態を続けていた場合には、これが違法であることに気づくことができたはずであり、「労働者派遣法等を免れる」目的(「免れる目的」)が認められる(大阪高判令和3年11月4日)。

(3)本件では、平成11年から、偽装請負状態であった。したがって、日常的かつ継続的に偽装請負状態を続けており、これが違法であることに気づくことができたはずであり、「労働者派遣法等を免れる」目的(「免れる目的」)が認められる(大阪高判令和3年11月4日)。

4 解説

(1)業務請負契約について、偽装請負にあたるかどうか、判断される事情としては、①発注会社から請負会社(の社員)への具体的な指示の有無だけでなく、②業務請負契約において、仕事・商品にミスがあった場合にどちらが責任を負担するか、③その仕事・商品を製造するノウハウを請負会社が持っているかを考慮することを示した判例です。

参考

 ビジネスガイド2022年6月号28頁

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