判例(正社員に寒冷地手当を支給し、時給社員の時給で地域差を考慮して決定する仕組みと同一労働同一賃金)
2024/04/29 更新
事例
(1)有期契約労働者と、(無期契約労働者である)正社員の業務(郵便業務)には相応の共通点がある。
(2)正社員には、寒冷地手当が支給されている。
正社員の給与について、基本給は地域によって差がない。勤務地域の寒冷地、積雪等を参考に寒冷地手当の金額が決まっていた。
(3)有期契約労働者の時給は、地域別最低賃金が勤務地域ごとに必要とされる生活費を考慮して決まっていた。
判決
(1)個別の手当についてはその手当の趣旨から、パート・有期労働者に対し支給しないことが不合理な待遇差にあたるか判断するべきである。
(2)勤務地の寒冷地、積雪等を参考に寒冷地手当の金額が決まっていたことから、寒冷地であることに起因して暖房用燃料の増加がすることに対し、寒冷地手当が支給されていた。
(3)有期契約労働者の時給は、地域別最低賃金が勤務地域ごとに必要とされる生活費を考慮して決まっていた。
(4)したがって、有期契約労働者についても、寒冷地であることについて調整が図られていることも考慮すれば、有期契約労働者について、寒冷地手当が存在しにことは不合理な待遇差であるとはえいない。
東京地判令和5年7月20日
判例タイムズ1518号163頁
パータイム・有期雇用労働法
(1)パータイム・有期雇用労働法では、パート・有期労働者と、無期のフルタイム労働者との間に不合理な待遇差を禁止しています(同法8条、9条)。
(2)業務内容に差があり、かつ、労働条件差があるとしても、その差は業務内容の差に比例した差である必要があり、不合理な差別は許されません(パータイム・有期雇用労働8条)。
(3)かつては旧労働契約法20条の問題でしたが、現在では、パータイム・有期雇用労働法8条の問題となっています。
解説
(1)本判決は、個別の手当についてはその手当の趣旨から、パート・有期労働者に対し支給しないことが不合理な待遇差にあたるか判断するべきである、としました。
(2)本判決では、寒冷地であることによる給与の修正を、正社員には寒冷地手当によって、時給契約社員の時給において考慮されている、と認定しました。
(3)正社員と時給契約社員について同趣旨の配慮がされていることを前提に、正社員と時給契約社員の間においてどの程度差を設けることが許されるかは、会社に裁量が認められているので、不合理な待遇差とは認定されれなかった事例である、と解釈できます。