【有期雇用】更新の上限と、雇用条件通知書の明示
2024/02/10 更新
有期雇用
有期雇用とは、3か月~1年間等一定期間に限り雇用する期限付きの雇用契約であります。
無期転換
(1)何度も更新を繰り返した場合や、更新するとの期待を生じさせた場合には、有期雇用は期限の定めのない無期雇用と同様の扱いとなります(労働契約法19条)。
(2)更新を繰り返し、契約期間が通算して5年を超えると、有期雇用は期限の定めのない無期雇用と同様の扱いとなります(労働契約法18条)。
更新の上限
(1)かつては、無期転換に備えて、雇用契約書等に、「雇用契約開始日から、5年の期間を超えて更新することはない。」という特約を記載することは有効なのか、という議論がありました。
(2)判例(横浜地裁川崎支部令和3年3月30日)は、同特約を有効だとしています。
(3)5年未満の期間で会社が更新拒絶をした場合に、有期契約社員は、「①契約期間満了時に、更新の合理的期待が存在する。もしくは、②本件雇止めは客観的合理性を欠く。」という主張をすることになります。
しかし、判決は、契約時に「雇用契約開始日から、5年の期間を超えて更新することはない。」という合意をしていれば、①②について問題ないと解釈されるという判断をしました。
参考
ビジネスガイド2023年5月号90頁
更新の上限と、雇用条件通知書の明示
①更新の上限
(1)令和6年4月1日により、有期雇用について、通算契約期間(通算契約期間は3年とする)や更新回数(更新は3回まで)の条件を定める場合には、その旨を雇用条件通知書に記載する義務があります(労働基準法施行規則の改正)。
(2)令和6年4月1日により、有期雇用について、初回の契約時には、更新上限を設けていなかったが、その後に更新上限を設ける場合や、期間等を引き下げる場合には、上限を設ける前にその理由を説明しなければならなくなりました(有期契約労働者の雇止めや契約期間について定めた厚生労働大臣告示(有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準)の改正)。
参考
ビジネスガイド2024年2月号6頁
②無期転換権
(1)更新を繰り返し、契約期間が通算して5年を超えると、期限の定めのない無期雇用に変更してほしいと請求する権利が発生します。これを無期転換申込権といいます(労働契約法18条)。
(2)5年を超えて契約を更新する場合には無期転換権が発生します。令和6年4月1日により、無期転換申込権が発生する場合には、「無期転換申込権が発生します。」等の記載が必要です(労働基準法施行規則の改正)。
(3)以下のように、契約終了時において無期転換請求権が発生しない場合には、無期転換申込権について記載する必要はありません。
定年後再雇用 | 有期雇用特別措置法 定年後引き続いて雇用される従業員については、有期雇用特別措置法の特定の手続をすれば、無期転換権が発生しません。 この場合には、無期転換申込権の記載は不要です。 |
更新の上限 | 更新の上限 契約更新の上限を設ける場合には、有期雇用の契約期間を通算契約期間(通算契約期間は5年以内とする)や更新回数(更新は5回までとする)との条件を定める場合には、契約期間が通算して5年を超えませんので、無期転換申込権は発生しません。 この場合には、無期転換申込権の記載は不要です。 |
契約終了時が初期契約から5年以内となるとき | (1)5年を超えて契約を更新する場合には無期転換権が発生します。令和6年4月1日により、無期転換申込権が発生する場合には、「無期転換申込権が発生します。」等の記載が必要です(労働基準法施行規則の改正)。 (2)例えば、1年契約の有期雇用を締結した1年目の雇用条件通知書については、その契約終了日に無期転換申込権は発生しません。 この場合には、無期転換申込権の記載は不要です。 |
⑤無期転換申込権の記載のポイント
参考
ビジネスガイド2024年2月号6頁