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労使紛争

給与を減額するための手続

2023/04/08 更新

賃金の減額

(1)賃金の減額には、大きく3つの方法があります。
(2)正確には、労働協約等に基づく減額等その他の減額方法もあることもあります。

懲戒処分としての賃金の減額

(1)懲戒処分としての賃金を減額するには、以下の要件が必要です。
 ① 就業規則に「懲戒処分としての賃金の減額」の定めがあること
 ② 従業員がこれに該当する行為をしたこと。
 ③ 労基法91条の制限に反しないこと。

(2)労基法第91条は、以下のように定めています。  
 就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が1賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならない。

業務命令としての降格に基づく賃金の減額

(1)「役職が付いており、その役職が不適切であるとして、役職を外した。役職を外した結果、新しい業務での賃金水準に当てはめた結果、賃金が減額になる場合」「業務との適正がないとして、同業務からの変更を命じた。新しい業務での賃金水準に当てはめた結果、賃金が減額になる場合」は業務命令としての降格に基づく賃金の減額であるので、就業規則の定めは不要です。もちろん、就業規則の定めがある場合には、その定めに基づいた手続きを経たことが必要です。
(2)降格の合理性と、労働者の不利益を考慮した上での相当性が問題となります(白石哲「労働関係訴訟の実務 〔第2版〕」202頁以下)

就業規則の変更による賃金の減額

(1) 評価制度を就業規則として導入し、従業員の給与を変更するには以下の要件が必要です(労働契約法10条)。
 ① 賃金減額前に就業規則の変更手続をしたこと。
 ② 就業規則の変更に合理的理由があること
 ③賃料減額の根拠となる評価の規定
 ④従業員がこれに該当すること。
(2) 問題社員の対策として、給与の減額を検討する場合には、この手続を経るのが鉄則にはなります。

労働者との合意による賃金の減額

(1)従業員と合意して、従業員の給与を減額するには以下の要件が必要です(労働契約法9条)。
 ① 労働者の自由な意思に基づいてなされたものと認める足りる「合理的理由の客観的存在」
 ② 従業員が賃金減額に合理したこと
(2)従業員の立場では、会社から減額の申し出をされると、承諾する旨の書面に署名するしかないという力関係が存在します。
 最判平成28年2月19日民衆70巻2号123頁(山梨県民信用組合事件)は、退職金の支給基準を変更する合意の有効、無効が問題になった事案ですが、労働者の自由な意思に基づいてなされたものと認める足りる「合理的理由の客観的存在」が必要だと述べています。
 ② 労働者の自由な意思に基づいてなされたものと認める足りる「合理的理由の客観的存在」とは、具体的には、減額の合理的理由と、従業員と真摯に話し合った事実、が必要になると考えてよいでしょう。

参考

 佐々木宗啓ほか(編)「類型別 労働関係訴訟の実務 改訂版 Ⅰ」77頁以下

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