判例(人身傷害保険の保険会社が被害者に保険金を支払った。身体の障害又は疾病が損害拡大に寄与していたとして、722条2項の類推により、被害者の損賠償額が減額された場合、人身傷害保険の保険会社は、その支払った保険金全額もしくは、減額された被害者の賠償額のどちらか小さい額を限度として、加害者に対する損害賠償請求権に代位する。)
2025/12/02 更新
このページを印刷人身傷害保険
人身傷害保険は、被保険者が交通事故によって身体に障害を負った場合に、被保険者の過失を問わずに一定額が支払われる保険です。
既往症等による民法722条(過失相殺)の類推適用がある場合
例
実際に生じた損害を100万円、既往症等による民法722条(過失相殺)として、3割の減額が認められた。原告が受け取った人身傷害保険の保険金が40万円だった場合
最判令和7年7月4日判例タイムズ1537号27頁
(1)身体の障害又は疾病が損害拡大に寄与していた場合には、722条2項の類推により、損賠償額が減額されることがあります。
(2)人身傷害保険にも、事故前に生じていた既往症については賠償しないという約款が付されることが多く、その性質上、人身傷害保険が填補するのは、既往症を除いた損害(下記図では、70万円)に限られます。
(3)人身傷害保険を支払った保険会社は、その支払った全額(上記図では40万円)について、原告から損害賠償請求権を取得する。なお、(支払った)人身傷害保険の金額が、「疾患による影響を除いた原告請求額」を超える場合には、その「疾患による影響を除いた原告請求額」まで減額されます。
(4)なお、判決は、人身傷害保険の支払いに関し、限定支払条項(事故前に生じていた既往症については賠償しないという約款)によって、被害者への保険額を減額したかどうかは、結論に左右しない、としています。
図

参考
最判令和7年7月4日判例タイムズ1537号27頁)






