Q 債権者代位について教えて下さい。
2025/12/21 更新
このページを印刷債権者代位
(1)債権者は、自分の債権を保全するために、債務者が無資力の場合に、債務者の有している権利を代わって行使できます(民法423条1項)。これが債権者代位です。
(2)訴訟上だけでなく、内容証明を送って、債権者代位の成立を主張して、第三債務者に対する取り立てが可能です。
債権者代位訴訟
(1)民法上、債権者代位訴訟を提起するには、以下の要件を満たすことが必要です。(民法423条)。
①被保全債権の存在
②債務者の無資力
③被代位債権の存在(債務者の一身に専属する権利でも、差押えを禁じられた権利でもないこと)
④③の被代位債権の弁済期が到来していること
⑤債務者に訴訟告知したこと(民法423条の6)
(2)債権者代位訴訟の要件事実では、④③の被代位債権の弁済期が到来していることは、抗弁です。
| 民法423条(債権者代位権の要件) 1項 債権者は、自己の債権を保全するため必要があるときは、債務者に属する権利(以下「被代位権利」という。)を行使することができる。ただし、債務者の一身に専属する権利及び差押えを禁じられた権利は、この限りでない。 2項 債権者は、その債権の期限が到来しない間は、被代位権利を行使することができない。ただし、保存行為は、この限りでない。 3項 債権者は、その債権が強制執行により実現することのできないものであるときは、被代位権利を行使することができない。 民法423条の2(代位行使の範囲) 債権者は、被代位権利を行使する場合において、被代位権利の目的が可分であるときは、自己の債権の額の限度においてのみ、被代位権利を行使することができる。 民法423条の3(債権者への支払又は引渡し) 債権者は、被代位権利を行使する場合において、被代位権利が金銭の支払又は動産の引渡しを目的とするものであるときは、相手方に対し、その支払又は引渡しを自己に対してすることを求めることができる。この場合において、相手方が債権者に対してその支払又は引渡しをしたときは、被代位権利は、これによって消滅する。 民法423条の4(相手方の抗弁) 債権者が被代位権利を行使したときは、相手方は、債務者に対して主張することができる抗弁をもって、債権者に対抗することができる。 民法423条の5(債務者の取立てその他の処分の権限等) 債権者が被代位権利を行使した場合であっても、債務者は、被代位権利について、自ら取立てその他の処分をすることを妨げられない。この場合においては、相手方も、被代位権利について、債務者に対して履行をすることを妨げられない。 民法423条の6(被代位権利の行使に係る訴えを提起した場合の訴訟告知) 債権者は、被代位権利の行使に係る訴えを提起したときは、遅滞なく、債務者に対し、訴訟告知をしなければならない。 |
債権者代位訴訟の提起と、債務者の処分権
1 債務者の処分権
債権者代位権が行使された後も、債務者は、被代位債権についての処分権限が制限されないため、自ら権利行使をすることができる(民法423条の5前段)。債務者は、被代位債権の支払いを求めて債権者代位訴訟に対し共同訴訟参加できる(民事訴訟法52条)。
第三債務者も、債権者代位権が行使された後であっても、債務者に対して弁済することができる (民法423条の5後段)。
2 債権者代位訴訟
(1) 債権者代位権が行使された後も、債務者の処分権が失われるわけではない。
(2)したがって、債務者がその後に訴訟に参加すると、債権者は債権者代位訴訟で、金銭的な回収ができなくなる。
(3)債権者代位訴訟を提起するのは、債務者が行方不明であるときや、訴訟提起に消極的なときに限られます。
(4)多くのケースでは、債権者は、被代位債権について仮差押えの手続をしておき、債務者に対し被保全債権について訴訟提起し、同訴訟で勝訴した後に、強制執行として、被代位債権への差し押さえをすることになるでしょう。
債権者代位訴訟の効果
1 登記請求権
(1)債権者は第三債務者に対し、債務者名義への所有権移転登記手続を求めることが出来ます。
(2)債権者は、自己名義(債権者名義)とする登記を求めることはできません。
2 物の引き渡し
(1)債権者は三債務者に対し、自己(債権者)への引き渡しを求めることができます(民法423条の3)。
3 金銭請求
(1)債権者は三債務者に対し、自己(債権者)に支払えと請求できます(民法423条の3)。
(2)債権者は、債務者に対し同額について返還請求権を負うが、被保全債権と相殺して事実上優先弁済を受けることができます。
参考
岡口基一「要件事実マニュアル(第7版)第1巻 民法1」586頁以下






