Q 抵当権が実行されたとき、抵当権が設定されている不動産の賃借人はどのような立場となりますか。(対抗要件)
2025/12/07 更新
このページを印刷抵当権と賃借権の優劣
抵当権が実行されたとき、抵当権が設定されている不動産の賃借人はどのような立場となるか問題となります。
二重譲渡
(1)不動産の抵当権者と不動産の賃借人は、二重譲渡類似の対抗関係に立ちます(民法177条)。
(2)抵当権者が登記をしていなかったり、賃借人が対抗要件を備えていなかったりした場合には、対抗要件を有する者が勝ちます。
抵当権者も賃借人の対抗要件
(1)抵当権者が登記し、賃借人が対抗要件を備えていた場合に、抵当権設定登記と、賃借人の対抗要具備の前後で優越が決まります。
(2)抵当権者は抵当権の設定登記をすれば、対抗要件を備えます(民法177条)。
(3)建物の賃借人は、「建物の引渡し(占有開始)」があれば、対抗要件を備えます(借地借家法31条)。
| 借地借家法31条 建物賃貸借の対抗力 建物の賃貸借は、その登記がなくても、建物の引渡しがあったときは、その後その建物について物権を取得した者に対し、その効力を生ずる。 |
(4)土地について賃借権の登記をするれば、土地の賃借人は対抗要件を備えます。
①建物の所有を目的とする土地の賃貸借であり、かつ、②建物の所有権登記があれば、土地の賃借人は対抗要件を備えます(借地借家法2条1号、借地借家法10条1項)。
| 借地借家法2条 定義 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。 一 借地権 建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権をいう。 (省略) 借地借家法10条 借地権の対抗力 1項 借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができる。 2項 前項の場合において、建物の滅失があっても、借地権者が、その建物を特定するために必要な事項、その滅失があった日及び建物を新たに築造する旨を土地の上の見やすい場所に掲示するときは、借地権は、なお同項の効力を有する。ただし、建物の滅失があった日から二年を経過した後にあっては、その前に建物を新たに築造し、かつ、その建物につき登記した場合に限る。 |
抵当権者も賃借人の対抗要件
抵当権者が登記し、賃借人が対抗要件を備えていた場合に、抵当権設定登記と、賃借人の対抗要具備の前後で優越が決まります。
賃借人が優先する場合
賃借人が優先する場合には、抵当権が実行されても、賃借人の賃貸借契約は終了しません。次の建物所有者が賃貸人としてその賃貸借契約を引き継ぎます。
抵当権が優先する場合
(1)賃借人が優先する場合には、抵当権が実行されれば、賃借人の賃貸借契約は終了します。
(2)抵当権の設定登記後の、賃借人は、6か月以内に賃貸物の目的物を明け渡す義務を負います(民法395条1項)。
| 民法 395条 抵当建物使用者の引渡しの猶予 1項 抵当権者に対抗することができない賃貸借により抵当権の目的である建物の使用又は収益をする者であって次に掲げるもの(次項において「抵当建物使用者」という。)は、その建物の競売における買受人の買受けの時から六箇月を経過するまでは、その建物を買受人に引き渡すことを要しない。 一 競売手続の開始前から使用又は収益をする者 二 強制管理又は担保不動産収益執行の管理人が競売手続の開始後にした賃貸借により使用又は収益をする者 2項 前項の規定は、買受人の買受けの時より後に同項の建物の使用をしたことの対価について、買受人が抵当建物使用者に対し相当の期間を定めてその一箇月分以上の支払の催告をし、その相当の期間内に履行がない場合には、適用しない |
抵当権者の同意の登記
(1)抵当権設定登記後に対抗要件を備えた賃借人であっても、抵当権者の同意を得て、かつ、賃借権の登記をすれば、抵当権者に優先します。
(2)つまり、この場合には、 賃借人が優先する場合には、抵当権が実行されても、賃借人の賃貸借契約は終了しません。次の建物所有者が賃貸人としてその賃貸借契約を引き継ぎます。
| 民法387条 抵当権者の同意の登記がある場合の賃貸借の対抗力 1項 登記をした賃貸借は、その登記前に登記をした抵当権を有するすべての者が同意をし、かつ、その同意の登記があるときは、その同意をした抵当権者に対抗することができる。 2項 抵当権者が前項の同意をするには、その抵当権を目的とする権利を有する者その他抵当権者の同意によって不利益を受けるべき者の承諾を得なければならない。 |






