Q 譲渡担保は、担保設定者の破産手続きによってどのような影響を受けますか。
2025/12/25 更新
このページを印刷譲渡担保
譲渡担保契約とは、金銭債務を担保するため、債務者又は第三者が動産、債権を債権者に譲渡することを内容とする契約です(譲渡担保契約及び所有権留保契約に関する法律2条1号)。
別除権
1 原則
(1)譲渡担保権は、質権と同じくく別除権として扱われる(破産法97条、111条)。
(2)つまり、譲渡担保権者は破産手続によらずに、権利を行使できる(破産法65条1項)。
2 例外
裁判所は、一定の要件のもとで、担保実行手続の中止命令、禁止命令、取消し命令を命じることができるようになった。
民事再生での特約
「民事再生手続において、担保設定者が動産をする権限を失うという合意」 「民事再生手続において、担保設定者が債権を回収する権限を失うという合意」は無効である(譲渡担保契約及び所有権留保契約に関する法律105条)。
| 譲渡担保契約及び所有権留保契約に関する法律105条 再生手続開始の申立て等を権限の消滅事由とする特約の無効 次に掲げる場合に集合動産譲渡担保権設定者が動産特定範囲に属する動産の処分をすることができない旨の特約又は次に掲げる場合に集合債権譲渡担保権設定者が債権特定範囲に属する債権を取り立てることができない旨の特約は、無効とする。 一 集合動産譲渡担保権設定者又は集合債権譲渡担保権設定者について再生手続開始の申立て又は更生手続開始の申立てがあったとき。 二 集合動産譲渡担保権設定者又は集合債権譲渡担保権設定者に再生手続開始の原因となる事実(支払不能(その者が法人である場合(破産法第十六条第二項の場合を除く。)にあっては、支払不能又は債務超過(その者が、その債務につき、その財産をもって完済することができない状態をいう。)とする。以下この号において同じ。)が生ずるおそれがある場合又はその者が事業の継続に著しい支障を来すことなく弁済期にある債務を弁済することができない場合のいずれかに該当する事実をいう。第百十条第二号において同じ。)又は更生手続開始の原因となる事実(支払不能が生ずるおそれがある場合又はその者が弁済期にある債務を弁済することとすれば、その事業の継続に著しい支障を来すおそれがある場合のいずれかに該当する事実をいう。同号において同じ。)が生じたとき。 |
破産手続の開始と、集合動産譲渡担保権の固定
1 破産手続の開始
破産手続の開始があれば、譲渡担保契約及び所有権留保契約に関する法律66条の通知があったものとみなされます(同法106条)。
2 集合動産譲渡担保権の固定
(1)破産手続の開始後、担保設定者は担保財産の処分権を失う(同法66条3項)。
(3)破産手続の開始後に、倉庫等に納品された動産は、担保権の対象とならない(同法66条2項)。
この通知によって、担保財産が固定化する。固定化後の手続は、個別の動産譲渡担保と同じである。
| 譲渡担保契約及び所有権留保契約に関する法律106条 集合動産譲渡担保権設定者について破産手続開始の決定、再生手続開始の決定、更生手続開始の決定又は特別清算開始の命令があった場合には、第六十六条第一項の規定による通知があったものとみなして、同条第二項から第四項まで及び第六項の規定を適用する。 |
参考
自由と正義2025年12月号29頁以下






