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Q (流動)集合動産譲渡担保とは何か。

2025/12/25 更新

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譲渡担保

 譲渡担保契約とは、金銭債務を担保するため、債務者又は第三者が動産、債権を債権者に譲渡することを内容とする契約です(譲渡担保契約及び所有権留保契約に関する法律)。

(流動)集合動産譲渡担保の概要

1 在庫一切という記載が認められるか。

(1)動産の種類場所を特定することで、将来そこに属する動産も一つの集合物として譲渡担保の対象とすることが認められている(譲渡担保契約及び所有権留保契約に関する法律40条)。

(2)動産の種類場所を特定することが求められているので、「A倉庫の在庫一切」という内容では、動産の種類が特定されておらず、特定を欠くことになる。

2  (流動)集合動産譲渡担保

 在庫を譲渡担保として認めいる場合に、その在庫から一部の商品が売却されて喪失し、新しい商品が在庫として加わって、流動していくことを認めていることになります。そこに属する動産についても、集合動産譲渡担保の論点とは、(流動)集合動産譲渡担保です。

3 集合物論

(1)かつては、(流動)集合動産譲渡担保について、個々の動産が譲渡担保の対象となるという説と、「A倉庫のB商品の在庫」という集合物が譲渡担保の対象となる説がありました。

(2)譲渡担保契約及び所有権留保契約に関する法律40条は、「動産の種類場所を特定することで、将来そこに属する動産も一つの集合物として譲渡担保の対象とする。」ことを認めました。

譲渡担保契約及び所有権留保契約に関する法律40条 特定範囲所属動産を一体として目的とする動産譲渡担保契約
動産譲渡担保契約は、次に掲げる事項を指定することにより、将来において属する動産を含むものとして定められた範囲(以下「動産特定範囲」という。)によって特定された動産(以下「特定範囲所属動産」という。)を、一体として、その目的とすることができる。
一 譲渡担保動産の種類
二 譲渡担保動産の所在場所その他の事項

(流動)集合動産譲渡担保と担保設定者の処分権

1 (流動)集合動産譲渡担

(1)(流動)集合動産譲渡担保の場合には、企業の在庫等について担保を設定する。

 この場合には、担保設定者は担保財産について、別段の定めのない限り、自由に処分する権限を有する(譲渡担保契約及び所有権留保契約に関する法律42条1項、2項)。

(2)別段の定め(譲渡担保契約及び所有権留保契約に関する法律42条2項)として、担保設定者と担保権者の間で、「在庫が500個を下回らない範囲で、担保設定者は処分ができる。」という定めをすることがありえ、その場合には担保設定者は、その範囲で処分権が制限されます。

(3)上記の範囲を超えて、設定者が担保財産を第三者に譲渡した場合、第三者は担保の目的の制限の付いた所有権のみしか取得できません。
 つまり、第三者は、即時取得が成立する場合に救済されることになります。

 なお、集合譲渡担保の場合には、即時取得の成立に、無過失は不要です((譲渡担保契約及び所有権留保契約に関する法律42条3項)。

(譲渡担保契約及び所有権留保契約に関する法律42条 集合動産譲渡担保権設定者による動産特定範囲に属する動産の処分
1項 集合動産譲渡担保契約における動産譲渡担保権設定者(以下「集合動産譲渡担保権設定者」という。)は、動産特定範囲に属する動産の処分をすることができる。ただし、集合動産譲渡担保権設定者が集合動産譲渡担保権者を害することを知っていたときは、この限りでない。
2項 前項本文の規定にかかわらず、集合動産譲渡担保契約に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
3項 集合動産譲渡担保権設定者が、集合動産譲渡担保権者を害することを知って動産特定範囲に属する動産の処分をし、又は前項に規定する別段の定めによる処分権限の範囲(次項及び第四十四条において「権限範囲」という。)を超えて動産特定範囲に属する動産の処分をした場合における民法第百九十二条の規定の適用については、同条中「善意であり、かつ、過失がない」とあるのは、「善意である」とする。
4項 集合動産譲渡担保権設定者が集合動産譲渡担保権者を害することを知って動産特定範囲に属する動産の処分をするおそれがあるとき、又は権限範囲を超えて動産特定範囲に属する動産の処分をするおそれがあるときは、集合動産譲渡担保権者は、その予防を請求することができる。

参考

 自由と正義2025年12月号17頁

(流動)集合動産譲渡担保とにおいて、担保権者の対抗要件

担保権者の対抗要件

(1)担保権者が、第三者に対し譲渡担保の成立を主張するには、担保財産(動産)の「引渡し」もしくは、動産譲渡負登記が必要です(民法178条)(譲渡担保契約及び所有権留保契約に関する法律32条)。

(2)ここでの引渡しには、(設定者が担保財産を事実上占有したまま、今後は担保権者のために占有することを宣言する)占有改定も含まれます。

参考
 岡口基一「要件事実マニュアル(第7版)第1巻 民法1」467頁以下

担保設定者が二重に譲渡担保を設定した場合

1 対抗関係

(1)担保設定者が二重に譲渡担保を設定した場合、二人の譲渡担権者は対抗要件の関係に立つことになります(譲渡担保契約及び所有権留保契約に関する法律32条)。

(2)担保権者が、第三者に対し譲渡担保の成立を主張するには、担保財産(動産)の「引渡し」もしくは、動産譲渡登記が必要です(民法178条)(譲渡担保契約及び所有権留保契約に関する法律32条)。

(3)担保権の順位は、動産の引渡し(動産譲渡登記を含む)の前後によることになります(譲渡担保契約及び所有権留保契約に関する法律32条)。

2 占有改定

(1)ここでの引渡しには、(設定者が担保財産を事実上占有したまま、今後は担保権者のために占有することを宣言する)占有改定も含まれます。もっとも、占有改定には、占有状態の外形が変化しない点で、弱い部分があります。

(2)もっとも、占有改定により対抗要件を具備した担保権者は、他の方法(現実の引渡し、簡易の引渡し、指図による占有移転、動産譲渡担保登記)により対抗要件を満たした担保権者に劣後します(譲渡担保契約及び所有権留保契約に関する法律36条)。

譲渡担保契約及び所有権留保契約に関する法律

32条 動産譲渡担保権の順位
 同一の動産について数個の動産譲渡担保権が互いに競合する場合には、その動産譲渡担保権の順位は、その動産の引渡し(登記又は登録をしなければ権利の得喪及び変更を第三者に対抗することができない動産にあっては、登記又は登録)の前後による。

36条 占有改定で対抗要件を備えた動産譲渡担保権の順位の特例
1項 第32条及び前条並びに事業性融資の推進等に関する法律(令和六年法律第五十二号)第18条第一項の規定にかかわらず、占有改定で譲渡担保動産の引渡しを受けることにより対抗要件を備えた動産譲渡担保権は、占有改定以外の方法で譲渡担保動産の引渡し(特例法第三条第一項の規定により引渡しがあったものとみなされる場合を含む。)を受けることにより対抗要件を備えた動産譲渡担保権若しくは動産質権又は企業価値担保権に劣後する。
2項 動産譲渡担保権が占有改定以外の方法で譲渡担保動産の引渡し(特例法第三条第一項の規定により引渡しがあったものとみなされる場合を除く。)を受けることにより対抗要件を備えたものであっても、その後に動産譲渡担保権設定者が当該譲渡担保動産を現に所持して占有したときは、前項の規定の適用については、占有改定で引渡しを受けることにより対抗要件を備えたものとみなす。

(流動)集合動産譲渡担保と、個別動産譲渡担保が二重に設定された場合

 (流動)集合動産譲渡担保と、個別動産譲渡担保が二重に設定された場合には、(流動)集合動産譲渡担保は、譲渡担保を設定したときと、その担保財産を現実に引き渡しを受けたときのどちらか遅いときに、引渡しを受けたものとみなすとされています(譲渡担保契約及び所有権留保契約に関する法律41条2項)。

 (流動)集合動産譲渡担保で、将来、購入して在庫となる担保動産について対抗要件を具備することになりますが、実際に倉庫等に搬入されたときに対抗要件を具備したと考えるのが妥当という考え方です。

譲渡担保契約及び所有権留保契約に関する法律41条 集合動産譲渡担保権についての対抗要件の特例
1項 特定範囲所属動産を一体として目的とする動産譲渡担保契約(以下「集合動産譲渡担保契約」という。)に基づく動産譲渡担保権(以下「集合動産譲渡担保権」という。)を有する者(以下「集合動産譲渡担保権者」という。)は、動産特定範囲に属する動産の全部の引渡しを受けたときは、当該動産特定範囲に将来において属する動産(次項において「特定範囲加入動産」という。)についても、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有することを第三者に対抗することができる。
2項 同一の動産について集合動産譲渡担保権と他の動産譲渡担保権(集合動産譲渡担保権を除く。)又は動産質権とが競合する場合において、当該他の動産譲渡担保権に係る動産譲渡担保権当初設定者(動産譲渡担保契約の当事者のうち譲渡担保動産を譲渡した者をいう。以下同じ。)又は当該動産質権を設定した者がその動産譲渡担保契約の締結又は質権の設定の時点における当該集合動産譲渡担保権に係る動産譲渡担保権設定者以外の者であるときは、特定範囲加入動産についての第三十二条及び第三十五条の規定の適用については、集合動産譲渡担保権者が前項の引渡しを受けた時又は当該特定範囲加入動産が動産特定範囲に属した時のいずれか遅い時に引渡しを受けたものとみなす。

集合動産譲渡担保権の実行

(1)被担保債権が履行遅滞に陥った後に、担保権者は、担保権を実行するためには、帰属清算の通知もしくは、処分清算の通知をしなければならない(譲渡担保契約及び所有権留保契約に関する法律66条1項)。

(2)通知を受けたときには、担保設定者は担保財産の処分権を失う(同法66条3項)。

(3)通知後に、倉庫等に納品された動産は、担保権の対象とならない(同法66条2項)。

 この通知によって、担保財産が固定化する。固定化後の手続は、個別の動産譲渡担保と同じである。

譲渡担保契約及び所有権留保契約に関する法律66条
1項 集合動産譲渡担保権の被担保債権について不履行があった場合において、集合動産譲渡担保権者が帰属清算の通知又は処分清算譲渡をしようとするときは、その旨を集合動産譲渡担保権設定者に通知しなければならない。
2項 前項の規定による通知をした集合動産譲渡担保権者が有する集合動産譲渡担保権及び当該集合動産譲渡担保権に競合する集合動産譲渡担保権は、当該通知が集合動産譲渡担保権設定者に到達した後に、当該通知をした集合動産譲渡担保権者が有する集合動産譲渡担保権に係る動産特定範囲(次項及び第四項において「実行対象動産特定範囲」という。)に属するに至った動産には及ばない。
3項 第一項の規定による通知が集合動産譲渡担保権設定者に到達したときは、当該集合動産譲渡担保権設定者は、第四十二条第一項本文及び第二項の規定にかかわらず、実行対象動産特定範囲に属する動産(前項の規定により集合動産譲渡担保権が及ばない動産を除く。)の処分をすることができない。
4項 第一項の規定による通知が到達した時に実行対象動産特定範囲に属していた動産と外形上区別することができる状態で保管する方法により分別して管理されていない動産は、当該通知が到達した時に当該実行対象動産特定範囲に属していたものと推定する。
5項 集合動産譲渡担保権者が、第一項の規定による通知において、その集合動産譲渡担保権に係る動産特定範囲を更に第四十条各号に掲げる事項を指定することにより限定し、その限定された範囲に属する動産についてのみ帰属清算の通知又は処分清算譲渡をしようとする旨を示したときは、同項の規定による通知の効力は、その定められた範囲にのみ生ずる。
6項 第二項の規定に反する特約は、無効とする

参考
 自由と正義2025年12月号8頁以下

 自由と正義2025年12月号17頁以下

 

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