【財産開示】財産開示請求(債務者の立場で)
2023/10/16 更新
このページを印刷強制執行と財産開示
判決で支払いを命じられたが、不払いとしていると債権者が財産開示請求をすることがあります。
公正証書で支払いを約束していたが、不払いとしていると債権者が財産開示請求をすることがあります。
財産開示請求
財産開示請求は、裁判所を通じて、債権者が債務者に対して「あなたの財産のリストを出せ。」と要求する手続きです。
懲役、罰金による強制
(1)財産開示請求を無視して、財産目録の提出を怠ったり、期日に出頭しなかったり、期日で虚偽 の供述をしたりすれば、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金がかされます。
(2)したがって、財産開示請求があればしっかりと対応する必要があります。
財産開示の実施決定
(1) 裁判所から、財産開示実施決定が届きます。
(2) 既に全額を支払っている場合や、3年以内に財産開示手続を行っている場合には再度の財産開示はできません。このような場合に、債務者は不服申し立てができます。
(3)不服申し立て期間は1週間です。これを過ぎると、財産開示の実施決定が確定します。
(4)財産開示の実施決定が確定すると、後日、「財産目録を提出せよ。」「財産開示期日に裁判所に来なさい。」という書類が届くことになります。
財産開示の実施決定
財産開示の手続
財産目録の提出
(1)債務者は、自分の財産目録(財産のリスト)を裁判所に提出しなければなりません。
(2)故意に、自分の財産を財産目録に記載しなかった場合には、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金がかされるリスクがあります。
財産開示の期日
(1)財産開示期日は裁判所に出向く必要があります。そして、財産開示の期日において、自分の持っている財産について、裁判官や債権者の弁護士からいろいろな質問を受けます。
(2)債権者らの質問は、①財産目録に記載されている財産の具体的な説明と、②財産目録に記載されえていない財産の有無です。
(3)債権者は、会社のHP、SNSを通じて情報を収集しています。例えば、HPの写真を見せられて、「この写真に写っているものは何か。」という形で説明を受けることもあります。
債権者らの質問に対し、提出済みの財産目録と矛盾しない形で回答する必要があります。
(4)財産目録に記載が洩れている財産があるとき、その場で回答すれば懲役等の不利益を受けません。
(5)財産開示の日程につて税理士に伝えておき、税理士に電話して質問できるように頼んでおいてもよいかもしれません。
例えば、「確かに、財産目録に乗っていない預金口座がありますが、正確な口座番号等は分かりません。」と答えた場合には、財産開示の次回期日を開くことになる可能性があります。 その場で税理士に電話してもらって回答できればこれを省けます。
よくある質問
債権者が、債務者の銀行の情報を取得する制度はどんなものがありますか。
(1)判決や、裁判上の和解書がある場合には、23条照会や民事執行法の手続により、1銀行ずつ手続すれば、支店等の情報が分かえり執行ができます。しかし、1銀行の情報の開示にも5000円以上の費用がかかります。
債権者が費用を出して調べるとしても、三菱東京UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行、ゆうちょ銀行のメガバンクが限界です。
(2)上記の手続で分かるのも、「銀行名、支店名、種別、口座番号」までです。取引履歴が分かれば、お金が消えている等の情報が分かるのですが、そのような情報も開示されません。
(3)債権者が債務者の銀行の情報を取得する制度がないわけではありませんが、現実的には難しいのが現状です。
債権者が、債務者の財産(銀行以外)を取得する制度はどんなものがありますか。
(1)判決や、裁判上の和解書がある場合には、民事執行法の手続により、以下の手続ができるようになりました。
法務局に対し、不動産の情報を取得する。
証券会社に対し、保有している上場株式の情報を取得する。
※ 逆に言えば、債権者が証券会社を特定するもしくは、全ての証券会社に開示の手続きをし、その費用を負担しなければならなくなります。
(2)養育費や婚姻費用、命を奪ったもしくは怪我を負わせた場合などには、市役所や年金事務所に対し、同機関が把握している勤務先の情報を提出するように請求できます。
(3)逆に言えば、上記以外の情報を債権者が取得することは困難です。例えば、債権者が債務者の提出した決算書を税務署から取り寄せることはできません。
財産目録作成のチェックリスト
(1) 三菱東京UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行、ゆうちょ銀行のメガバンクについて虚偽の記載をしていないか。虚偽の記載はバレる可能性はあります。
(2)勤務地について虚偽の記載をしていないか。債権者が探偵を雇った場合には、勤務地がバレる可能性があります。
(3)SNSや、自社のHPでの記載と矛盾しないか。例えば、HPで取引先を紹介している場合に、後日、売掛金の記載漏れが発覚する可能性があります。
(4)不動産の記載に漏れがないか。法務局からの情報で、虚偽の記載がバレる可能性があります。