判例(「いいね。」を押した意味が、他の言動を考慮して侮辱の意味であると評価される場合には、「いいね」を押したことについて不法行為が成立する)
2024/06/19 更新
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他人の記事に「いいね」を押した場合どうなりますか。
他人の記事について「いいね。」を押したとしても、自分のフォロワーにその記事は拡散されません。
他人の記事についてツイートをすれば、自分のフォロワーにもその記事をそのまま見せることなります。
それでは、名誉を傷つけるような内容の記事に「いいね」をされたとしても、訴えることはできないのでしょうか。
「いいね」を押す行為が直ちに不法行為になるとは限りませんが、さまざまな事象を考慮して「いいね」が侮辱の意味にあたると認められた判例があります。
判例
他人の社会的名誉を低下させる内容の記事について「いいね。」を押した意味が、他の言動を考慮して侮辱の意味にあたると評価される場合には、「いいね」を押したことについて不法行為が成立する。
(令和4年10月20日東京高裁)
参考
判例タイムズ1511号138頁
解説
他人の記事について「いいね。」を押したとしても、自分のフォロワーにその記事は拡散されません。
また、記事についての「いいね」を押したとしても、その記事のどの部分を応援するのか、それとも、記事ではなく、投稿者を応援する意図なのかは分かりません。
他人の社会的名誉を低下させる内容の記事について「いいね。」を押した意味が、他の言動を考慮して侮辱の意味にあたると評価される場合には、「いいね」を押したことについて不法行為が成立する、という判断をしました。
なお、本判決のいる原審は、被告が「いいね」を押した意味について第一審は、対象ツイートの記載が原告のアカウントの記載から判断したのに対し、控訴審は、それに限られず、原告と被告(「いいね」を押した人物)の関係や、これまでの被告(「いいね」を押した人物)の言動等を含めて判断したと言われています。(判タ1511号139頁)。
被告(「いいね」を押した人物)は、25回も「いいね。」を押し、11万人ものフォロワーがおり、かつ、同人物が国会議員であり、社会的な影響力が高い人物でした。
したがって、他人の社会的名誉を低下させる内容の記事について一般人が「いいね。」を押したからといって、直ちに、民事的な賠償義務が発生するかは未確定といえるでしょう。