判例(他人を誹謗中傷する手紙の内容をユーチューブで公開した場合、噂の存在について述べたものに過ぎないかもしれないが、名誉棄損が成立する。また、違法性が阻却されるためには、手紙の存在ではなく、手紙の内容について真実であることの立証等が必要となる。)
2025/12/06 更新
このページを印刷噂の適示と名誉棄損
1 一般的基準説
事実の摘示が社会的評価を低下させるかは、一般人の通常の注意力を前提に、その人の社会的評価が低下するかを基準とします。
2 噂の適示
(1)他人を誹謗中傷する手紙の内容を公開した場合、事実ではなく、ある事実が存在するとの噂の存在について述べたものであると評価できます。
(2)一般人が噂を聞いて、噂があるという認識となるのか、それとも、それとも噂の根拠となった事実が存在すると認識するのかが問題となります。
(3)しかし、〇〇という噂がある、という内容であっても、これを見聞きした一般人の立場では、噂の根拠となった事実が存在する可能性があると認識するのが通常であるとされています。
福岡地裁令和6年12月6日判決
1 事案
(1)県会議員についてセクハラやパワハラをしているという手紙が別の議員に送られた。
(2)ユーチューバーがこの手紙を紹介する動画を作成して公開した。
2 判決
(1)本件のユーチューバーが作成した動画では、「県会議員についてセクハラやパワハラをしている」という手紙を紹介するだけでなく、紹介者が「この界隈では有名な話」「よくご存じだなと思います。」という発言をしており、そもそもが、それとも噂の根拠となった事実が存在すると認識される発言をしており、名誉棄損罪が成立します。
(2)また、違法性が阻却されるためには、手紙の存在ではなく、手紙の内容について真実であることの立証等が必要となります。
福岡地裁令和6年12月6日判決
判例タイムズ1537号183頁
解説
(1)噂の存在について述べたものに過ぎない場合にでも、多くのケースでは、一般人の立場では、噂の根拠となった事実が存在する可能性があると認識するのが通常であり、同様の結論になるでしょう。
(2)他人を誹謗中傷する噂について述べた場合にも、原則として名誉棄損が成立するでしょう。また、違法性が阻却されるためには、噂の存在ではなく、噂の内容ついて真実であることの立証等が必要となるでしょう。
判例タイムズ1534号237頁






