判例(マンション管理会社の社員が、マンションの(敷地の一部である)傾斜地の亀裂を発見したという事案で、傾斜地が崩落し、通行人が死亡する事故について、マンション管理会社の責任を認めた。)
2024/11/05 更新
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(1)マンションの管理会社の社員は、マンションの敷地の一部である傾斜地について、亀裂を見つけて、管理会社に報告した。管理会社は県土事務所に連絡した。その22時間後に、マンションの敷地の一部である傾斜地が崩落し、通行人が死亡する事故が起きた。
(2)斜面地が崩落した原因は、風化防止策が不十分であったための風化が原因であった。
判決
(1)亀裂の存在等から、22時間後の傾斜地の崩落を否定することはできず、斜面地の下にある市道についてコーンを置いたり、通行人に注意を呼びかけたりする等は可能であった。
(2)したがって、マンションの管理会社には、事故を防止すべき義務があり、不法行為責任を負う。
令和5年12月15日横浜地裁
参考
判例タイムズ1524号229頁
解説
(1)そもそも、マンション管理会社は、マンションの住民(管理組合)とマンションの管理について契約を締結します。
マンションの管理契約の中に、「マンションの敷地の一部である傾斜地の崩落を防止すること」は明記されていません。また、マンション管理会社が義務を負うのは、マンションの住民(管理組合)に対してです。
(2)判例は、上記の事実経過からして、「マンションの敷地の一部である傾斜地の崩落が予想される場合には適切な対応をとる義務があった。」と考えてさらに、「被害者との関係で、その生命身体に生ずる損害を防止する義務を負っていた。」という判断をしています。
(3)不作為の場合には、だれにどのような作為義務を認めるか問題となります。判決では、マンションの管理会社の社員が認識した、具体的な事実関係を考慮して、マンションの管理会社には、事故を防止すべき義務があるとした判例です。